褥瘡

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褥瘡とは、悪化時には壊死が起こる。対処には褥瘡の発生に関する専門的な知識が必要である。

大切なのは、予防、処置、その療法を見通したケアである。

褥瘡という言葉について

床ずれともいう。褥は「しとね」と読み、寝具のことである。

つまり褥瘡とは、寝具によって病的な身体的な瘡ができること、という意味の言葉である。

褥瘡の発生メカニズム

血管の血流が圧力によってせきとめられてしまい壊死が起こる。あるいは、外力によって生じた応力によって組織が不可逆的なダメージを受けてしまい治癒力を上回るスピードで組織破壊がおこることで、壊死が広がった状態となる。

つまり、血流を阻害しないことと、極力応力を発生させないことが、褥瘡に対処するための大きな戦略となる。

褥瘡が発生しやすい人の傾向

疼痛に対して鈍麻や感覚麻痺がある

自発的な運動の低下

活動性の低下

褥瘡の予防

作業療法士が、すぐにできる褥瘡の予防に関する項目を書く。

寝床の環境調整

ベッドマットの反発性の調整、ポジショニング、クッションの導入、体位交換のマネジメント、ベッドのギャッジアップ、ベッド柵カバーの導入

参考資料

床ずれ予防コンパクトガイド 株式会社 ケープ 中條俊夫

離床機会の提供

車椅子への移乗等に伴う姿勢変化、体力増強、栄養状態改善に寄与する食欲増進

シーティング

関節の拘縮などの要因により、車椅子座位時に理想的な姿勢がとれず、円背や「坐骨ずわり」となり、褥瘡が発生することがあるため、クッションなどを用いて、褥瘡が発生しにくい体勢に近づけることが必要である。

リフト

リフトの利用は、移乗時の侵襲的な外力の発生を抑えることができる。

スライディングボード

車椅子への移乗時に摩擦が発生することを防ぐことができる。

好発部位の理解[1]

骨が突出した部位では一般に褥瘡ができやすいとされる。

例として、仙骨部、尾骨部、大転子部、踵骨部などである。

また、羸痩(るいそう)の状態になると、当然骨が突出する部位は全身の至る所にみられるようになると、褥瘡発生リスクが低栄養も合わさって困難である。

背臥位

後頭部,肩甲骨部,肘,踵,下腿

側臥位

大転子部,肩外側,骨盤の腸骨部,膝,足関節外果,また耳介部

腹臥位

前額部,前胸部,膝,足,特に足趾

褥瘡の発生原因となる力

褥瘡を説明する文脈においては、褥瘡を発生させる力については、以下のような言葉と概念が用いられる。

体圧

ベッドと体の間に働く圧力。褥瘡を引き起こす力を考える時の一応の目安とできる。

圧が 40 mmHg 以下であれば褥瘡は発生しにくいとされている。[2]

簡易体圧測定器がなければ、低圧保持エアマットレスの接触圧を底付き現象で確認する。なお、底付き現象とは、手掌を上にして指を低圧保持エアマットレスの下に差し込み、第2指か第3指を曲げてみて適切なエアセル圧を評価する方法である。また、適切圧とは、指を約2.5cm曲げると骨突起部に軽く触れる程度とされている。[2]

応力

応力とは、身体の部位に発生している単位面積あたりの力である。つまり圧力と同じ単位で考えることができる。

人体に加えられた外力は、体内で応力となる。

褥瘡の理解においては、骨との関連性の理解が重要となる。

圧縮応力

文字通り押しつぶす方向への力。褥瘡においては、ベッドなどの支持面と骨の間に生じる力となる。

引っ張り応力

文字通り引っ張る方向への力。褥瘡においては、圧縮応力によって組織が潰れたことによって、その上に位置する骨が沈み込む時に周辺の組織を引っ張っていくことによって生じる力である。

剪断応力

ずれる方向に働く力。異なる二つの方向への力に板挟みになってはたらく力。介助の時に加える外力が結果として剪断応力となってくる。いわゆる「圧抜き」で対応できるものの正体。

鑑別が必要なもの

鑑別を要する疾患には以下のようなものがある。[2]

反応性充血,そのほか糖尿病などによる末 梢動脈疾患,便や尿の刺激による皮膚炎,皮膚カンジ ダ症,接触皮膚炎,電気メスによる熱傷,消毒薬によ る化学熱傷

褥瘡発生のリスク要因

加齢(75才以上)

乾燥

湿潤(水分による皮膚のふやけ)

羸痩(るいそう、病的で過度な痩せ状態)

低栄養

過度の日光暴露

認知機能低下

体位交換との関連

機械的で単純な体位交換が、褥瘡発生を予防すると同時に、一旦発生した褥瘡の治りを却って遅くする。

褥瘡発生後の対応

褥瘡発生後は、より細やかな対応が必要となる。

外力が褥瘡の治癒を促進し、また、妨げることがないようにすることが前提となる。

看護的処置

まず、壊死した組織を除去する。

その後、専用のドレッシング材を用いて、瘡を保護する。

作業療法士としての対応

上記の前提のもと、作業療法士として、対象者その人自発的な体動を引き出せるよう、環境調整をおこなうことが重要である。

これによって、機械的な体位変換による褥瘡の治癒の遅れを減らすだけでなく、その後の褥瘡の発生リスクも低下させることができる。

その際のポジショニングについては、基本的に予防の段階のものと共通で考えて良い。

円座にエビデンスはほぼない

褥瘡発生等に対して、統計学的に意味のある証拠は存在しない。[3]

引用・参照