転倒
大腿骨頸部骨折などによって、容易に寝たきりになることが報告されて以降、施設などで対象者の行動制限の理由の大きな要因となっている。
自宅生活においても、要介護状態が進行していくにつれて、転倒のリスクを軽減しながら、いかに移動の効用や経済性を維持向上していくかということが、リハビリテーション支援の大きな要素となる。
作業療法士が介入する場合には、機能改善のみがその介入の範疇とはならず、転倒リスクを軽減しながら、本人の生活目的を達成できるように助言や提言を行っていくことになる。
転倒の要因
転倒の要因としては、
身体機能低下 認知機能低下 実際に可能な能力と本人のできるつもりの乖離
が挙げられている。[1]
転倒の対策
どのような状況で転倒が頻回に起こっているのかを把握したうえでなければ対策を十分に行うことは難しい。[1]
転倒の分析については、下記の論文が参考になると思われる。
[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm/68/4/68_510/_pdf/-char/ja 当院における転倒・転落患者の現状 ─ 291件のインシデント・アクシデントレポートから─.佐藤瑞騎 他.日農医誌 68巻 4 号 510~516頁 2019.11]
転倒と裁判
転倒が理由で裁判となり、熊本地裁の判決において、施設側が管理責任をとわれる形で敗訴している。
認知症のため投薬治療中の方が入院中の独歩にて転倒した。その際、男性はスタッフに声をかけておらず、見守りもいなかった。転倒が原因となって麻痺が出現し、寝たきりとなった方の家族が病院を訴えた。その訴えは認められ、損害賠償を支払うこととなった。小野寺優子裁判長は判決理由で、男性は歩く際にふらつきが見られ、転倒する危険性は予測できたと指摘。その上で、「速やかに介助できるよう見守る義務を怠った」と述べた。[2]
4点柵の使用
転倒防止の観点で、4点柵が使用されることは多々あるが、効果に疑問を呈するエビデンスが存在する。
ある急性期病棟においては、転倒防止において有意な効果が見られなかったという研究報告がある。[3]本研究の限界としては,観察期間が短く,転倒転落の発生も 十分でなかったため一般化することは難しい