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条件付確率などを織り込んだ[統計学]。
条件付確率などを織り込んだ[[統計学]]。


あとから、起こった観測事象とそれまでの確定的な確率から、現在の確立を割り出す方法を前提とした統計学。
あとから、起こった観測事象とそれまでの確定的な確率から、現在の確立を割り出す方法を前提とした統計学。
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ベイズの定理は、事前確率、尤度、事後確率の関係を表すものであり、以下の数式で表される:
ベイズの定理は、事前確率、尤度、事後確率の関係を表すものであり、以下の数式で表される:


𝑃
$$ P(A|B) = \frac{P(B|A) \cdot P(A)}{P(B)} $$
(
𝐴
𝐵
)
=
𝑃
(
𝐵
𝐴
)
𝑃
(
𝐴
)
𝑃
(
𝐵
)
P(A∣B)=  
P(B)
P(B∣A)⋅P(A)
   
   
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ここで、
ここで、


𝑃
- \( P(A|B) \) は、事後確率と呼ばれ、事象Bが観測された後の事象Aの確率を表す。
(
- \( P(B|A) \) は、尤度と呼ばれ、事象Aが真であると仮定した場合の事象Bの確率を表す。
𝐴
- \( P(A) \) は、事前確率と呼ばれ、観測データが得られる前の事象Aの確率を表す。
- \( P(B) \) は、周辺確率と呼ばれ、事象Bが観測される全体の確率を表す。
𝐵
 
)
P(A∣B) は、事後確率と呼ばれ、事象Bが観測された後の事象Aの確率を表す。
𝑃
(
𝐵
𝐴
)
P(B∣A) は、尤度と呼ばれ、事象Aが真であると仮定した場合の事象Bの確率を表す。
𝑃
(
𝐴
)
P(A) は、事前確率と呼ばれ、観測データが得られる前の事象Aの確率を表す。
𝑃
(
𝐵
)
P(B) は、周辺確率と呼ばれ、事象Bが観測される全体の確率を表す。
== ベイズ統計学の基本概念 ==
== ベイズ統計学の基本概念 ==
ベイズ統計学にはいくつかの基本概念が含まれる。以下に主な概念を示す。
ベイズ統計学にはいくつかの基本概念が含まれる。以下に主な概念を示す。

2024年6月19日 (水) 08:12時点における最新版

条件付確率などを織り込んだ統計学

あとから、起こった観測事象とそれまでの確定的な確率から、現在の確立を割り出す方法を前提とした統計学。

当然ベイズの定理は、ベイズ統計学においては基本定理。

資料

ベイズ統計-慶應義塾大学SFC

概念と定義

ベイズ統計学(Bayesian Statistics)は、ベイズの定理に基づいてデータ解析を行う統計学の一分野である。ベイズの定理は、事前の信念(事前確率)をデータ(観測データ)に基づいて更新し、事後の信念(事後確率)を求める方法を提供する。このアプローチは、確率を主観的な信念の度合いと見なし、逐次的に更新していく点が特徴である。

ベイズの定理

ベイズの定理は、事前確率、尤度、事後確率の関係を表すものであり、以下の数式で表される:

$$ P(A|B) = \frac{P(B|A) \cdot P(A)}{P(B)} $$ ​


ここで、

- \( P(A|B) \) は、事後確率と呼ばれ、事象Bが観測された後の事象Aの確率を表す。 - \( P(B|A) \) は、尤度と呼ばれ、事象Aが真であると仮定した場合の事象Bの確率を表す。 - \( P(A) \) は、事前確率と呼ばれ、観測データが得られる前の事象Aの確率を表す。 - \( P(B) \) は、周辺確率と呼ばれ、事象Bが観測される全体の確率を表す。

ベイズ統計学の基本概念

ベイズ統計学にはいくつかの基本概念が含まれる。以下に主な概念を示す。

事前分布(Prior Distribution)

  • 定義: データを観測する前に持っている信念や知識を確率分布として表したもの。
  • 役割: 解析の初期段階での推測の基礎となる。

尤度(Likelihood)

(読み方は「ゆうど」)

  • 定義: 仮定したモデルがデータを生成する確率を表す関数。
  • 役割: データに基づいてモデルのパラメータを評価するために使用される。

事後分布(Posterior Distribution)

  • 定義: 事前分布と観測データを組み合わせて更新された信念を表す確率分布。
  • 役割: データを考慮した後のパラメータ推定や予測に使用される。

ベイズ推定(Bayesian Estimation)

  • 定義: ベイズの定理を用いてパラメータの事後分布を求め、その分布から推定を行う方法。
  • 手法: 最尤推定(MLE)とは異なり、パラメータの確率分布を考慮して推定を行う。

ベイズ予測(Bayesian Prediction)

  • 定義: 事後分布を用いて新しいデータの予測を行う方法。
  • 手法: 予測分布を求め、未来の観測データの分布を推定する。

ベイズ統計学の応用

ベイズ統計学は多くの分野で応用されている。以下に主な応用例を示す。

医学

  • 診断と治療効果の評価: ベイズ統計学は、診断テストの結果や治療効果の評価において、事前知識と新しいデータを組み合わせてより正確な推定を行う。
  • 臨床試験: 臨床試験のデザインや解析において、ベイズアプローチが用いられる。特に適応試験において有効。

機械学習

  • ベイズ分類器: ナイーブベイズ分類器は、ベイズの定理を用いて分類問題を解く手法であり、テキスト分類などに広く用いられる。
  • ベイズネットワーク: 複雑な確率的依存関係をモデル化し、推論や学習に使用される。

経済学とファイナンス

  • リスク評価と管理: ベイズ統計学は、リスクの評価と管理において、事前知識と観測データを組み合わせてより正確な予測を行う。
  • 市場予測: 金融市場のデータ解析や予測において、ベイズアプローチが用いられる。

工学と科学研究

  • 品質管理: 製造プロセスの品質管理において、ベイズ統計学は異常検知やプロセス最適化に使用される。
  • 天文学: 宇宙の観測データを解析し、天体の特性や動きを推定するためにベイズアプローチが用いられる。

ベイズ統計学のメリットと限界

ベイズ統計学には多くのメリットがあるが、いくつかの限界も存在する。以下に主なメリットと限界を示す。

メリット

  • 事前知識の統合: 事前分布を通じて、既存の知識やデータを解析に組み込むことができる。
  • 逐次的更新: 新しいデータが得られるたびに事後分布を更新し、最新の情報を反映できる。
  • 柔軟なモデリング: 複雑なモデルや非標準的な分布を扱う柔軟性がある。

限界

  • 計算コスト: ベイズ推定には計算リソースが多く必要とされる。特に高次元の問題では計算が困難。
  • 主観性: 事前分布の選択は解析者の主観に依存するため、結果にバイアスが生じる可能性がある。
  • 収束の問題: マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法などの計算手法では、収束の確認が難しい場合がある。