食事
食事を食べることは
栄養をとり自己を維持し
楽しみとして舌を楽しませ
食事を通して人と交わる。
食事は、誰にとってもとても大切なことが確定している作業の一つである。
それゆえに、食事が障害されるとQOLが大きく毀損されることも多い。
食事について、掘り下げていく。
嚥下機能やその訓練についてのより専門的内容については、嚥下も参考のこと。
食欲
食事をとりたいという欲求である食欲は、人が生きて行くために必要な栄養を摂取する行動を惹起する。
食欲が低下すると、栄養状態が悪化する。
美味しいと思えること、また食べる料理が美味しいと思える料理であることなどが大切な要素である。
特に、健康の為、というモチベーションが内的に作れないような人には、過度に栄養面を強調してしまうと、食欲の低下をもたらすリスクが高まる。
逆に、好きなものや食べたいと思うものであれば、どれだけ高齢でも、あるいは飲み込み、嚥下機能に障害があっても、食欲が出て食べられるようになる可能性が、ある。
作業療法士は食べたいという意欲に対して、総合的な視点から向き合い支援をすることが大切である。
食事と経口摂取
広義の食事という言葉には、栄養摂取という意味あいも含まれる。
これは、胃瘻などによる経管栄養や、鼻からの経鼻栄養なども含む。
しかし、一般的に食事と聞けば多くの人は経口摂取を思い浮かべる。
それはやはり、人は食事を舌で味わいたいと思うからである。
経口摂取が、できることが、単に必要な栄養を摂取することを超えて、作業療法対象者の生きる力を支える大きな要素となり得る。
食事の方法
食事を取るには、
口に食べ物を運び
口の中に入った食べ物をのみくだす。
基本はこの行程が、理解できていれば評価介入が可能である。
摂食・嚥下についての理解が大切である。
口に食べ物を運ぶ
使う食器によって戦略が異なる。
箸
なんでも掴んで食事をとることができる。液体を、すくう以外の形態に対応できる万能食器とも言える。
ただし、扱いには高い巧緻性が必要であり、巧緻性が障害されると途端に扱いが困難となる。
スプーン
巧緻性が低くても扱うことができるので、乳幼児から高齢者だけでなく、すべての人が比較的簡単に食事を取りたいときに用いる。
特に、箸では困難な食品を掬う動作が非常に行いやすい。
ただし、手指の巧緻性が比較的必要ない反面、すくった食材や料理がこぼれおちないよう、手首と前腕の回旋でバランスを取る必要があり、これらが障害されると食べこぼしが増えてしまう。
また、食材を挿すことはできないので、フォークや串などを併用する必要があり、使用する食器が増えるため、認知機能の注意の切り替えの機能も必要になる。
食事を準備する
作る
食材を使って、自分で作る。
ヘルシーな食事を作りやすく、いわゆるダイエットなど体重コントロールなどを行いやすい。
ただし、作る時間、片付ける時間がかかる。
料理も参考
買って帰る
スーパーや、飲食店でテイクアウトし、出来上がりをそのまま家で食べる。
配食、給食サービス
あらかじめ契約に基づいて、食事を定期的に届けてくれるので、自分で食事について考える必要性が低下する。
外食
食べるだけですむ。
お金は一番必要になるし、安い店で長期的に食べ続けると、高コスト食材の摂取が乏しくなり、健康を害する可能性が高まる。
食事と姿勢
食事には、姿勢が密接に関わる。
楽しく、美味しい食事をとるためには、少なくとも誤嚥リスクが高い不適切な姿勢ではないことが必要である。
また、本人が苦痛なくリラックス出来るような姿勢が取れていることも必要である。
食事と文化
料理
各国の料理はそれぞれの土地の要素を反映したものになっている。
その土地の料理に習熟しておくことは、文化的な豊かさを享受することを可能にし、同時に経済的によりよく生きることを可能にする。
料理の項目も参照のこと。
食卓
食事をとることは、コミュニケーションの重要な場となる。
特に、家族の関係性を象徴するものとして重要である。
食事行為のリハビリテーションの専門家
摂食・嚥下のリハビリテーション
摂食・嚥下機能については、言語聴覚士と繋がることでより専門的にリハビリテーションを受けることが出来る。
特に一般的な病院においては、言語聴覚士がちゃんと配置されていれば、作業療法士が摂食・嚥下にメインでコミットすることは少ないはずである。
嚥下機能や食事で困ったら、言語聴覚士に相談するのが良い。
言語聴覚士がいない場合には、作業療法士がその役割を担うことになるので、作業療法士に相談する。
また、病院によっては、患者数や重症度に対して言語聴覚士の人数が不足している場合もあり、その場合には、協業して行うこともある。
食事環境の調整
食事環境を調整することが必要な場合、作業療法士は個別に環境調整を関係各所に提言する。
病院施設における食事
病院施設における食事は、基本的に栄養を管理するためのものであって、それ以外の要素は優先順位が低い。特に、食事代などが特別に確保されているような病院でない場合はなおのことである。
一般に病院や、大きな施設では、食事を提供する側としては、一度に大量に供給する必要性から、個人の好みは一切考慮できない。これは、たとえば同様に大量の食事を一度に提供することが必要となる、旅館などでも同じである。
しかし、その食事がうまいかまずいかはその人のQOLを確実に左右する。
旅館は不味ければ客足が遠のき、経営を左右するが、一方で病院は、その施設でなければ受けられないサービスがあるならば、食事が不味くてもそれを食べなければならない。
これは、一患者としては、自分で選択することができない上に不味い食事というのは、かなり心理的にダメージが大きいものである。なかには、こうした生活に耐えられず、病院を抜け出してしまう人が一定数いるほどである。
常にうまい食事が提供できる訳はないが、せめて週に一回から月に一回くらいは、生きる意欲を掻き立てるような食事が提供されることが、入院者の生きようとする力を大きく刺激する。