喀痰吸引

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喀痰吸引は、気道内に溜まった痰や分泌物を取り除くための重要な医療処置であり、適切な技術とケアが求められる。自力で痰を排出できない患者に対して行われ、呼吸機能の維持・改善、感染予防など多くの利点がある。しかし、感染、出血、低酸素症、気管損傷などのリスクも伴うため、慎重な実施が必要である。看護とケアのポイントを守りながら、適切な喀痰吸引を行うことで、患者の健康状態を改善し、快適な生活を支援することが可能である。

リファレンス

https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2014/09/kakutankyuin_ver2_20140912.pdf

吸引プロトコル-(社)日本理学療法士協会

喀痰吸引

概念と定義

喀痰吸引(かくたんきゅういん、Suctioning)は、気道内に溜まった痰や分泌物を取り除くための医療処置である。主に自力で痰を排出することが難しい患者に対して行われる。喀痰吸引は、気道の閉塞を防ぎ、呼吸機能を維持・改善するために重要な役割を果たす。

適応と目的

喀痰吸引は、以下のような患者に対して適応される。

適応患者

  • 自力排痰が困難な患者: 高齢者、神経筋疾患患者、脊髄損傷患者など。
  • 人工呼吸器装着患者: 気管切開や挿管を行っている患者。
  • 慢性呼吸器疾患患者: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、嚢胞性線維症など。

目的

  • 気道確保: 気道の閉塞を防ぎ、呼吸を確保する。
  • 呼吸機能の改善: 酸素化を改善し、呼吸困難を軽減する。
  • 感染予防: 痰や分泌物による感染を防ぐ。

手技と方法

喀痰吸引にはいくつかの手技と方法があり、患者の状態や環境に応じて選択される。以下に主な手技と方法を示す。

口腔・鼻腔吸引

  • 定義: 口腔や鼻腔から痰を吸引する方法。
  • 手技: 吸引カテーテルを口腔または鼻腔に挿入し、痰を吸引する。
  • 適応: 軽度の痰の排出が必要な場合。

気管吸引

  • 定義: 気管内から痰を吸引する方法。
  • 手技: 気管切開チューブや挿管チューブを通じて吸引カテーテルを挿入し、痰を吸引する。
  • 適応: 気管内に痰が多く、自己排痰が困難な場合。

閉鎖式吸引

  • 定義: クローズドサクションシステムを使用して行う吸引方法。
  • 手技: 気管切開チューブや挿管チューブに接続された吸引カテーテルを操作し、痰を吸引する。
  • 適応: 人工呼吸器装着患者、頻繁な吸引が必要な場合。

器具と装置

喀痰吸引に使用される主な器具と装置を以下に示す。

吸引カテーテル

  • 種類: 口腔・鼻腔用、気管用、閉鎖式カテーテル。
  • 特徴: 柔軟性があり、適切なサイズを選択することが重要。

吸引装置

  • 種類: ポータブル吸引装置、据え置き型吸引装置。
  • 特徴: 吸引力の調整が可能で、持ち運びやすいタイプもある。

その他の関連器具

  • 手袋、マスク、アイシールド: 感染予防のために使用。
  • 滅菌生理食塩水: カテーテルの洗浄や気道の湿潤に使用。

合併症とリスク

喀痰吸引にはいくつかの合併症やリスクが伴う。以下に主なものを示す。

感染

  • リスク: 吸引器具の不適切な使用や清潔管理の不備による感染リスク。
  • 予防: 器具の滅菌、生理食塩水の使用、適切な防護具の装着。

出血

  • リスク: カテーテルの挿入による粘膜の損傷や出血。
  • 予防: カテーテルの適切なサイズ選択と慎重な挿入。

低酸素症

  • リスク: 吸引中の酸素供給の一時的な遮断による低酸素症。
  • 予防: 吸引時間の短縮、酸素供給の継続。

気管損傷

  • リスク: カテーテルの過剰な挿入や操作による気管損傷。
  • 予防: 適切な技術と慎重な操作。

看護とケア

喀痰吸引を行う際には、患者の状態を観察し、適切なケアを提供することが重要である。以下に看護とケアのポイントを示す。

観察と評価

  • 呼吸状態の観察: 呼吸数、酸素飽和度、呼吸音の変化をモニタリング。
  • 患者の反応の評価: 痛みや不快感、吸引後の状態を評価。

事前準備

  • 器具の準備: 必要な器具を滅菌し、手元に用意する。
  • 患者の体位調整: 吸引がしやすい体位に調整。

手技の実施

  • 安全な吸引: 指定された方法と手技に従い、慎重に吸引を行う。
  • 吸引時間の制限: 吸引は15秒以内にとどめ、必要に応じて繰り返す。

事後ケア

  • 器具の処理: 使用済み器具を適切に処理し、再利用する器具は滅菌。
  • 患者の安静: 吸引後の呼吸状態を観察し、安静を保つ。