ターミナルケア

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人生にはいつか終わりがくる。

そして、時にその終わりが予測される中で、どのように生きていくかの選択迫られる時がある。

人生の終わりが感じられる中で、どのようによりよく生きて死んでいくかを支えるのがターミナルケアである。

本ページでは、作業療法とターミナルケアの関係について述べる。

ターミナルケアの目的

鈴木らは、

苦痛・苦悩の緩和により患者の生活の質または、人生の質Quality of life(QOL)を維持・向上することにある [1]としている。


ターミナルケアにおける作業の効果について

三木らは、事例報告をレビューするなどして、作業の効果を10項目に要約[2]している。

1喪失体験の多い生活の中で、作り上げる喜びなど創造的な体験を提供し、消失から創造へと転換を促す。


2苦悩や抑圧された感情を安全な形で発散することによる心理的な浄化や鎮静作用をもたらす


3情緒的・感情的レベルに直接働きかけ、言語を越えてコミュニケーション手段、感情表現を提供する


4回想を誘発し、「快」刺激のライフレビューを促す


5生活リズムを整え、季節感や楽しみを与える


6作品を後世に残すことで、自分のエネルギーが生き続けるという安心感や自己の存在の確認を与える


7有形、無形の財産の伝承の場を提供する


8作業に集中することにより、痛み、倦怠感や死への恐怖、こだわりからの転換を促す


9他者との校流を促進し、孤独感を和らげ、役割を与える


10自律心、自尊心を高め、廃用性の機能低下を防ぐ

ターミナルケアが生まれた背景

ターミナルケアという言葉は、従来、癌患者や重度の臓器障害などの不可逆的な過程により、死がある程度予想された時期に訪れる患者を対象に使用されてきた経緯がある[1]

若年者など若く健康なものが、何らかの疾患を通して急激に、死に寄っていく過程を支えるための概念として生まれたのがターミナルケアという考えかたである。

つまり、遠ざけていた、あるいは身近なものでなかった死が突然目の前に立ち現れてきた時に提供されるものという、特殊性が強調される中で生まれた言葉と言える。

現代社会のターミナルケア

しかし、現代社会においては、人生の週末期において、病院、施設、在宅の区別なく何らかの医療・福祉のサービスを受ける中で、ターミナルケアは普遍性と継続性を持つようになった[1]という。

日本においても高齢社会となり、死を身近に感じながらも生きる時間が、以前と比べ長くなっている。

よって、ターミナルケアを考える時、終末期の定義に関する時間的ある位は病態的概念の曖昧さが常に問題とされる[1]

日本におけるターミナルケアの課題

若年者のターミナルケアは、正に死と突然直面するところから始まる。

当事者は、見積もりの平均寿命から格段に短い人生を生きることになる現実を突きつけられることになる。

その感情は、当事者にしかわかるものではないが、周囲はそれを支えなければならない。


高齢者においても山積した問題が、ますます大きくなってきている。

鈴木らは、日本においては、老衰状態における医療措置に関して、本人の意思の反映や延命措置の是非に関する社会的合意が存在しないため、どのような死を迎えるかは、個々の医療者や家族の意向に左右されるのが現状である。 [1]という。

また、死にゆく高齢者の人権や尊厳が脅かされている可能性がある[1]と鋭く示唆している。


ターミナルケアにおける作業療法

若年者のターミナルケアにおける作業療法

高齢者の終末期として考えられる病態[1]

鈴木らは以下のように病態の例を挙げている。

・悪性腫瘍の進行期

・重篤な脳血管疾患

・COPDによる心肺機能不全

・末期の腎不全

・治療の不適応の重症心不全

・重度の認知症による心外套状態

高齢者の終末期の特徴[1]

鈴木らは以下のように特徴を述べている。

・悪性腫瘍の進行が感情的にで症状が出にくい場合がある

・予後(死に至る時期)が予測しにくい(個体差、偶発性の有無)

・治療やケアにおいて本人の意思が反映されにくい