接遇

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接遇にも、いろいろな視点や切り口が存在するが、往々にしていろいろな事業所では接遇を向上させることが難しい。また、高品質な接遇を維持することも難しい。

そこで、いちプレイヤーの立場から事業所の接遇を向上させるための方法論について考える。

まず、事業所目線で接遇というものを考える。この事業所は営利団体であり、利益を上げることを至上として運営されている組織を想定する。なぜならば利益を上げることを中の職員が強く意識することを強制されているときに、接遇は低下しやすいという筆者の実体験があるからである。

その後、プレイヤーとして接遇というものにどのように向き合うことができるか、ということについての情報を記載する。

事業所のマネージャー層に向けた接遇対策については、後半に記載する。

接遇という言葉を用いる文化

まず、接遇という言葉は、およそ、医療介護業界ではぐくまれたものではない、と断じて良い。

つまり、飲食業界をはじめとした他の業界の講習会などから輸入されて使われるようになっていると思われる。

つまり、本態的には、接遇のガワは存在しても、中身は存在していなかった。

そのようなものがなくとも、きちんと仕事をしていれば、より良いサービスが提供でき、接遇など問題にならなかったのが一つの理由であり、もう一つの理由は、医師や看護師といった専門職が提供するサービスにたいして顧客の側が無批判であることが長く当たり前とされていたことにあると思われる。

そこに、看護補助者や介護という区分が導入されたことによって、「接遇」という言葉が、事業所側から顧客からの提供サービスへの評価イメージの向上の為に必要とされたという実態がある。

およそ、接遇という言葉が必要とされた背景の理解には、経営上の文脈からの理解が必要となると思われる。

事業所目線としての接遇

接遇とは、事業所側が顧客に対して、どのような言動で応対するかという方法論である。それらが、本質的サービスの評価や印象をも大きく左右する要因となるため、経営資源として接遇やマナーが一流な職員の存在は希少である。

一つにそれは、より質の高い接遇をおこなうためには、非常に多くの理性的コストと判断力、顧客や周囲への尊敬、リスペクトを絶えず持つことなどの状態の維持が必要になるという構造があるためである。

もう一つに、高い接遇は顧客があるサービスを実際に体験して論ずるときに、本質的サービスの経済的価値以上に顧客の印象を左右し、たとえ本質的価値に関してのサービス内容が同一であったとしてもあるいは、サービス内容が多少劣るとしても、顧客は時に接遇の質が極めて高いほうを採用するという行動原理に至ることが少なくない。

このように、接遇は本質的サービスの品質の向上とは本来別のものであるにも関わらず商品やサービスの評価をよいほうへと歪めうるため、市場競争力を高める原動力となり、経営資源として極めて希少性が高い。

そのため、より高付加価値でサービスや体験を売ることによって金銭を得るビジネスモデルの業界の方がはるかに高い給与を得られるので常に医療介護業界はそのような業界への接遇の質が高い人材の流出リスクを構造的に抱え続けている。たとえそうでないにしろ、超一流の接遇を行うことが出来る人材をお金によって得るためには、それなりの人材獲得競争への投資やその維持コストが必要になる。

このため、事業所単位で見たときに接遇に対して高品質を維持するために必要な時間的、金銭的投資は十分にかけられないという現実がある。

接遇は、医療介護の組織運営上、話題になることが多く、多くの場合「接遇やマナーが悪い」という視点で話題なる。


辞書的定義

広辞苑によると[1]

せつ‐ぐう【接遇】 もてなし。接待。あしらい。

下記補足も含めて総合すると、

「客への対応の仕方における、身のこなし、取り計らい、処置、提供するサービス」の型 とまとめることもできる。

補足

もて‐なし【もて成し】[2] 1 客への対応のしかた。待遇。「手厚い—を受ける」

2 食事や茶菓のごちそう。饗応。「茶菓の—を受ける」

3 身に備わったものごし。身のこなし。

「いとわろかりしかたちざまなれど、—に隠されて口惜しうはあらざりきかし」〈源・末摘花〉

4 とりはからい。処置。取り扱い。

「自らの上の—は、又誰かは見扱はむ」〈源・総角〉

接待せっ‐たい【接待/摂待】[3]

[名](スル)

1 客をもてなすこと。もてなし。「得意先を—する」「—係」

2 人の集まるところなどで、一般の人に湯茶などを振る舞うこと。

3 寺の門前や往来に清水または湯茶を出しておき、通りがかりの修行僧に振る舞うこと。接待茶。《季 秋》「—の寺賑(にぎは)しや松の奥/虚子」

あしらい〔あしらひ〕[4]

1 応対すること。あつかい。もてなし。「ひどい—を受けた」

2 組み合わせて趣を添えること。また、そのもの。取り合わせ。「—にパセリを添える」

3 (「会釈」とも書く)芸能の型。また、手法。

㋐能で、相手役に向き直って応対する型。

㋑能の囃子(はやし)の一。

㋒狂言に奏する囃子。狂言アシライ。

㋓長唄で、間拍子(まびょうし)に合わせて、自由な形で即興演奏する手法。

4 連句の付合(つけあい)手法の一。前句の事物を取り入れた付け方。→七名八体(しちみょうはったい)