逆流性食道炎

逆流性食道炎に対する作業療法は、生活習慣の改善やストレス管理、体位の工夫など、多岐にわたるアプローチを通じて患者の症状を緩和し、生活の質を向上させることができる。

作業療法士は、個々の患者に合わせた支援を提供し、逆流性食道炎の管理をサポートすることが求められる。これにより、患者が日常生活をより快適に過ごすための手助けとなる。

逆流性食道炎の概要

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで引き起こされる慢性の消化器疾患である。

食道と胃のつなぎ目の下部食道括約筋という筋肉が、食物が通過するとき以外は胃の入り口を締めて胃の内容物が食道に逆流しないように働いており、この筋肉が緩むと胃から食道への逆流が起こる。

胃酸の逆流により食道の粘膜が炎症を起こし、胸焼けや嚥下困難、胸痛などの症状が現れる。適切な管理が行われないと、食道潰瘍やバレット食道などの重篤な合併症を引き起こす可能性がある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnms1923/58/4/58_4_371/_pdf/-char/ja

リスクファクター

下部食道括約筋が緩む原因としては、加齢による変化、胃内圧の上昇（食べ過ぎ、早食いなど）、腹圧の上昇（肥満、衣服による締め付けなど）、高脂肪食など

また、ストレスとの関連も指摘されている。

逆流性食道炎の症状と診断

逆流性食道炎の主な症状には、胸焼け、酸味のある胃内容物の逆流、嚥下困難、慢性咳嗽、喉の違和感などがある。これらの症状が継続的に現れる場合、医療機関での診断が必要となる。診断は、内視鏡検査、食道酸度測定、バリウム造影検査などを用いて行われる。

慢性上咽頭炎との鑑別

「逆流性食道炎様」の症状が「慢性上咽頭炎」により引き起こされたと思われる症例が紹介されている。

あいうべ体操の有効性

逆流性食道炎と思っていたものが、その実「慢性上咽頭炎」の場合は、あいうべ体操をすると改善する可能性がある。

作業療法の役割

作業療法は、生活習慣への介入を通しての逆流性食道炎の管理と症状緩和において重要な役割を果たす。この場合の作業療法士の介入においては、生活習慣の改善やストレス管理、体位の工夫などを通じて、患者の生活の質を向上させることを目指す。

生活習慣の改善

逆流性食道炎の管理には、食事内容や食事時間の見直しが重要となる。

作業療法士は、生活習慣のマネジメントの観点から全体的に、患者に適切な食事の摂り方を指導する。管理栄養士等の専門職と協業すべきであるが、例えば、脂肪分や酸性の強い食品、アルコール、カフェインの摂取を控えることが推奨されるので、そのような生活習慣の再構築に向けた支援を行う。

また、逆流性食道炎では一般に食事は少量ずつ頻回に摂るようにし、就寝前の食事を避けることも重要である。このような生活習慣が新たに再構築できるように作業療法士は支援を行うことがある。

体位の工夫

体位の工夫も逆流性食道炎の管理に有効である。食後にすぐ横になることを避け、上半身を少し上げた状態で休むように指導する。特に就寝時には、枕を高くして上半身を傾斜させることで、胃酸の逆流を防ぐことができる。

ストレス管理

ストレスは逆流性食道炎の症状を悪化させる要因となる。作業療法士は、リラクゼーション技法やストレス管理の方法を患者に指導する。深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れることで、ストレスを軽減し、症状の緩和を図る。

運動療法

適度な運動は消化機能の向上とストレスの軽減に役立つ。作業療法士は、患者に対して無理のない範囲での運動を推奨する。例えば、ウォーキングやストレッチ、軽いエクササイズなどが効果的である。ただし、食後すぐの運動は避けるように注意を促す。

作業療法の実践

逆流性食道炎に対する作業療法の実践には、以下のプロセスが含まれる。

アセスメント

まず、患者の症状や生活習慣、ストレスレベルを詳細に評価する。患者の日常生活や食事習慣、運動習慣などを把握し、個別のニーズに基づいた支援計画を立てる。

目標設定

患者のニーズや目標に基づき、具体的な治療目標を設定する。例えば、食事習慣の改善やストレス管理の技法習得、運動習慣の確立など、具体的な目標を明確にする。

介入計画の作成

設定した目標に基づき、具体的な介入計画を作成する。食事指導、体位の工夫、ストレス管理技法の導入、適度な運動の推奨など、患者に合わせたプランを立てる。

介入の実施とモニタリング

計画に基づき、実際に介入を実施する。介入の効果を定期的にモニタリングし、必要に応じてプランを調整する。患者のフィードバックを取り入れながら、継続的な支援を行う。

再評価と調整

介入の進捗を定期的に評価し、必要に応じて治療計画を再調整する。患者の症状の変化や生活習慣の改善状況に応じて、新たな目標を設定し、継続的な支援を提供する。

具体的な介入例

以下に、逆流性食道炎に対する作業療法の具体的な介入例を示す。

食事指導

管理栄養士等の専門職との協業が必要である。

患者に対して、逆流性食道炎に適した食事内容や食事のタイミングについて指導する。食事の際には、ゆっくりとよく噛むことや、食後すぐに横にならないことを強調する。

体位の工夫の指導

上半身を高くするための枕の使用方法や、適切な休息姿勢について指導する。特に就寝時には、ベッドの頭側を高くする方法を教える。

ストレス管理技法の指導

リラクゼーション法やストレス管理技法を患者に紹介し、実践方法を指導する。具体的には、深呼吸や瞑想、ヨガなどを取り入れ、定期的な実践を促す。

適度な運動の推奨

患者の体力や生活状況に応じて、無理のない範囲での運動を提案する。ウォーキングや軽いエクササイズを日常に取り入れることで、消化機能の改善とストレス軽減を図る。

逆流性食道炎改善のための作業療法としての運動療法

骨盤体操

胃食道逆流症の症状に対するブリッジ嚥下運動:パイロット研究 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター

逆流性食道炎と運動療法の関係

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することによって引き起こされる消化器系の疾患である。運動療法は、逆流性食道炎の症状を軽減し、全体的な健康状態を改善するための有効な手段である。作業療法の枠組みで、適切な運動を習慣化することは、消化機能の向上やストレスの軽減に寄与し、生活の質を向上させる。

運動療法の基本原則

逆流性食道炎の改善を目指す運動療法には、以下の基本原則がある。

適度な運動

過度な運動は逆効果になることがあるため、適度な運動を心掛けることが重要である。ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなど、負荷が軽く持続的に行える運動が推奨される。

食後の運動のタイミング

食後すぐの運動は避けるべきである。食後少なくとも1〜2時間は休息をとり、その後に運動を開始することが望ましい。食後すぐの運動は、胃酸の逆流を促進する可能性があるため注意が必要である。

体位の工夫

運動中の体位にも注意を払うことが重要である。逆流を防ぐために、上半身を高く保つ姿勢での運動を選ぶことが効果的である。ヨガやピラティスなど、体位をコントロールしやすい運動が有用である。

ただし、ブリッジ動作で空嚥下することで、改善する可能性を探る試みもあり、一概に上半身を比較してはならないというわけではなさそう。

推奨される運動の種類

逆流性食道炎の改善に効果的な運動には、以下のようなものがある。

ウォーキング

ウォーキングは、消化機能の向上やストレスの軽減に効果的である。無理のないペースで毎日30分から1時間程度のウォーキングを続けることが推奨される。食後のウォーキングは、食後1〜2時間経ってから行うようにする。

ヨガ

ヨガは、体の柔軟性を高めるとともに、ストレスを軽減する効果がある。逆流性食道炎に特に適したポーズとして、スプタバッダコナーサナやビパリタカラニが挙げられる。これらのポーズは、上半身を高く保ち、胃酸の逆流を防ぐのに役立つ。

ピラティス

ピラティスは、体幹を鍛え、姿勢を改善する運動である。適切な姿勢を保つことで、逆流性食道炎の症状を緩和することができる。ピラティスのエクササイズは、深呼吸とともに行うため、リラクゼーション効果も期待できる。

ストレッチング

ストレッチングは、筋肉の緊張を緩和し、全身の血行を促進する。特に、胸部や腹部のストレッチは、消化器系の機能をサポートするのに効果的である。毎日数分間のストレッチングを行うことで、症状の改善が期待できる。

運動療法の実践方法

逆流性食道炎の改善を目的とした運動療法の実践には、以下のプロセスが含まれる。

アセスメント

患者の健康状態や運動能力を評価し、適切な運動プランを立てる。特に、運動に伴うリスクや制限を把握することが重要である。

目標設定

患者のニーズや目標に基づき、具体的な運動目標を設定する。例えば、1日30分のウォーキングを週に5日続ける、特定のヨガポーズを毎日行うなど、達成可能な目標を設定する。

プランの作成

設定した目標に基づき、具体的な運動プランを作成する。ウォーキングやヨガ、ストレッチングなどの運動を組み合わせ、バランスの取れたプランを立てる。

実施とモニタリング

運動プランに従い、実際に運動を行う。運動中は、患者の状態をモニタリングし、必要に応じてプランを調整する。運動後には、患者からのフィードバックを収集し、効果を評価する。

再評価と調整

定期的に運動プランを再評価し、必要に応じて調整を行う。患者の状態の変化や目標の達成状況に応じて、新たな目標や運動プランを設定する。

運動療法の注意点

運動療法を行う際には、以下の注意点を考慮することが重要である。

無理のない範囲で行う

運動は無理のない範囲で行い、過度な負荷をかけないようにする。疲れを感じた場合は、適度に休息を取りながら進めることが重要である。

体調の変化に注意する

運動中や運動後に体調の変化があった場合は、速やかに中止し、医療機関に相談する。特に、胸焼けや胃痛などの症状が悪化した場合は注意が必要である。

適切な水分補給

運動中は適切な水分補給を行い、脱水を防ぐ。特に暑い季節や長時間の運動時には、こまめに水分を摂取することが重要である。