前頭側頭型認知症

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前頭側頭型認知症(FTD)認知症の最大10%を占める[1]

人間が社会生活を営む上で、時間的経過と経験を基にして、育んできた社会性が侵されていくという疾患的特徴があり、本人や家族への精神的な影響が極めて大きい。

また、これまで構築してきたさまざまな人間関係に対する障害ともなりえる疾患であり、そうした問題行動が見られた時にこの疾患を見抜ける人の存在があるかどうかは、その人のその後の人生と得られる支援を大きく左右するため、きわめて重要である。

概要

一般的な病態像としては、パーソナリティや行動のほか,通常は言語機能(構文および流暢性)がより強く障害されるが,記憶はあまり障害されない。抽象的思考および注意(持続および転換)が損なわれるため,応答がまとまりを欠く。見当識は保たれるが,情報の検索(想起)が損なわれる。[1]

ある程度進行するまではADLそのものに問題は生じないが、脳の前方部の機能が低下し脳の後方部、辺縁系、基底核系への抑制がはずれ、これらの機能の持つ本来の行動パターンが顕わとなり、前頭葉の機能そのものに由来する行動異常と併せて出現する前頭側頭葉変性症の臨床.池田学

そのため、アルツハイマー型認知症との鑑別が重要である、ともいろいろなところに書かれている。

家族本人向け資料・情報

前頭側頭葉変性症(指定難病127) – 難病情報センター

医療従事者向け

前頭側頭葉変性症の臨床.池田学

特徴的な様子

知っておくと、周囲の人間が「あれ?」となって気が付くことができる可能性が高まる。

なお、初期では記憶はあまり障害されないことにも注意。

社会性を意識する機能が低下し、「自己中心的」と表現されるような状態となる。

摂食障害のクレプトマニアなどでも、繰り返してしまう万引きなどの逸脱行動が見られることがあるなどほかの疾患との鑑別も重要である。

道路交通法を無視する

車道の真ん中をあるく

赤信号をわたる

食事や志向の変化

「味が濃くて、甘いものを過剰に摂る」

という、わかりやすい特徴のみならず、食べ物の好きなものが変わるなどの変化が起こることがある。

性的逸脱行動

痴漢や付きまといといった性的逸脱行動がみられることがある。

意欲、自発性の低下

質問しても真剣に答えない(考え不精)、適当に答える、ぼんやりとして何もしない、引きこもる

好発年齢

発症年齢は典型的には55~65歳[1]

治療

前頭側頭型認知症に特異的な治療法はない。[1]

環境調整による生活支持が、作業療法士が主に取り組むべきこととなる。

治療は一般に 支持療法による。例えば,居住環境は明るく,にぎやかで,親しみ慣れたものとし,見当識を強化できるような配慮を施す(例,大きな時計やカレンダーを部屋に置く)べきである。患者の安全を確保する対策(例,徘徊する患者に対して遠隔モニタリングシステムを使用する)を講じるべきである。前頭側頭型認知症(FTD) - 07. 神経疾患 - MSDマニュアル プロフェッショナル版

予後

根治療法は確立されておらず、緩徐進行性の経過をたどる。発症からの平均寿命は、行動障害型では平均約6~9年、意味性失語型では約12年と報告されている。[2]

ピック病

前頭側頭型認知症は、以前はピック病と呼ばれていた、と説明されることもある。

前頭側頭葉型認知症の中でも、ピック球と呼ばれる神経細胞の一種が見られるものを、前「ピック病」と呼ぶ。

病理

ピック小体にはタウというタンパク質がたまる

症状

ピック病の代表的な症状は意欲低下、常同行動、脱抑制に大別される。日本老年精神医学会や日本認知症学会のホームページでは、認知症専門医がいる医療機関を検索できる。また、NPO法人若年認知症サポートセンターでは、相談先や家族会などの情報提供を行っている。[3]

症状[4][2]

以下に典型的症状を羅列するので、典型的症状がいくつも重複が見られるかどうかを以って、各作業療法士スクリーニングとして用いることができる。

社会性の欠如
抑制が効かなくなる
同じことを繰り返す・反対に、一つの行為を持続して続けることができない注意障害
感情の鈍麻(どんま)
自発性な言葉の低下
過食となり、濃厚な味付けや甘い物を好むような嗜好の変化
共感や感情移入が困難
相貌や物品などの同定障害
物の名前が言えない語想起障害や複数の物品から指示された物を指すことができない再認障害
認知機能障害、運動障害など
進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核症候群の臨床症状を示すことがある


著名人

罹患した著名人には下記のような方がある。

ブルースウィルス氏[5]

参照