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人間がある程度集団を組織的に形成できるものには、政治的な求心力がはたらく。
人間がある程度集団を組織的に形成できるものには、政治的な求心力がはたらく。
==歴史==
ボバース夫妻が、ボバース概念、ボバースコンセプトを確立した経緯は下記の通り。
ユダヤ人であったボバース夫妻は、1933年のドイツの総統誕生から逃れ、イギリスへ亡命する。
ロンドンで仕事をし、ベルタの臨床をカレルが神経生理学の立場から解釈・体系化を試みた。
亡くなるまえに曰く
常に中枢神経系の協調性を追求すること
実用的な機能に必ず結びつけること
感覚・知覚・行動適応の問題を運動障害と同時進行に治療すること
中枢神経の概念が十分に治療に反映される前の時代には、斬新であったので多くの治療家に影響を与えた。
特に、脳の可塑性に働きかけるという概念は、これまでにないアプローチを臨床家に施行させた。
真実はともかくとして、パッケージ化され抽象化された治療概念の組み合わせが、大まかに効果的、時に的確であったので、臨床向きの概念として広がったとも解釈できる。


==参考==
==参考==


<references />
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2022年3月22日 (火) 13:45時点における版

イギリスの医師である故カレル・ボバース博士と理学療法士のベルタ・ボバース 夫人により開発された、リハビリテーション治療概念のひとつ。

古典的リハビリテーションと比べて治療効果が高いという、科学的統計学的エビデンスは存在しない。[1]

そのため、経済的に実践の価値があるかは一考される必要がある。講習会等は有料であるし、今後加算等が得られる見込みも薄いからである。

エビデンス

脳性麻痺に対する介入は、何もしなかった群と比較して変化がなかったという。[2]

脳卒中における介入は、古典的なリハビリテーションと比べて優位な効果がないというエビデンスがある[3]

現在の状況を正確に表現するとすれば,「中等度以上の麻痺を呈された対象者の方には,ボバースコンセプトの優位性はない」に加えて「重度例に対しては,エビデンスが存在しない(未だに検討されていない)」と言うことが挙げられる.つまり,重度な麻痺を呈した症例に対しては,効果は未知数ということを示している.ただし,未知数である手法を,一般的な医療の現場で,継続的に使用し続けることに問題がないわけではない.従って,今後は,重度な麻痺を呈した対象者に対するエビデンス調査する必要がある.[4]

反論

ボバースコンセプトに基づく介入は、極めて個別的かつオーダーメイドなものであるので、エビデンスが出せるような統計処理ができるような形で成果を情報化することは困難である。

その一方で、コンセプトをもとにしてきちんと評価が行えている治療者であれば、最低限のハンドリングで大きな効果を出すことができる。

だからボバースには価値がある。

評判

肯定的意見

初めて入職した職場の先輩が何をやってるのかがわかった。

僕が感じる良い点 アプローチではなくコンセプトなので医学の進歩とともにボバースも進歩していける つまり技術ではなく考え方 そして経験主義ではない [5]

否定的意見

30代でOT取得し、身障か精神で迷いました。

数十年前の話ですが、、

当時はボバースアプロ―チにのめりこんでいました。

結果的には後悔しています。

アプローチの本質というのは自分なりにつかめた気がしますが、

正直みんな手探り状態だと思います。

その中で、他の職員や他のアプローチを批判したり、患者の悪い面しか見えなくなったりと(個人差あり) 人生を棒にふったと思っています。

結論言うと、身障領域は講習会程度で精神に行った方が良いと個人的に思います。

あと、作業療法とか以外に社会心理学や経済心理学とかも勉強しながらできるだけ病院だけの狭い視野で生きないようにした方が良いと思います。

乱文 https://www.pt-ot-st.net/index.php/bbs/detail/104

内容

ボバースコンセプト、という言い方もされるくらい、あくまでコンセプトと理解する。こういう感じでやったらええんじゃなかろうか、というコンセプト、切り口、モノの見方と試行錯誤のやり方についてのヒント。

「Postral Set」つまり姿勢コントロールをベースに考えている。[6]

徒手的なテクニックを学ぶことができる。ここにはこれからも需要があり続けると思われる。

ボバースコンセプトで取り扱うことになる個々の情報や項目(筋、骨、関節、神経、画像診断、相互関係、生理学など)について、十分に理解ができている人は、コンセプトを使いこなせるし、そうでない人はその項目を勉強する必要性に改めて駆り立てられる、というのが現実。

一点、ボバース用語が山のように出てくるのを学ぶ価値があると思えるかどうか、エビデンスはないがそこに学習コストを払ってまで、コンセプトを身につけたいと思うか、ということは事前に検討・納得の上学習するのが良いと思われる。

ボバースが支持される要素

臨床介入において、「有害ではないが有効でもない」というエビデンスがあるにもかかわらず、いまだに支持される理由としては、下記のような理由が考えられる。

療法士育成において効果的

リハビリテーションの各要素と、対象となる障害像との関連について、自分の言葉で言語化することが難しい療法士や、学習意欲の高い療法士には、枠組みが明確でやってる感じがするので心理的に安心して取り組むことができる。過程を終了するということで、お墨付きがもらえる点も自信につながる。

また、そもそも学生時代にいきなり臨床介入可能即戦力スーパー療法士という人種が極めて稀であること、自学自習が苦手な人も多いことなどもその要因となっている様子。

介入の拠り所

不確実性に対して湧き上がる、これで良いのかという不安に対して、一定の効力を持つから。

先輩がやってるから

これは、おそらく最大の誘引であろう。

キャリアの一つとして

療法士キャリア、収入源の一つとして有力だからということがある。段位制度のある習い事に近いものがある。

政治的側面

人間がある程度集団を組織的に形成できるものには、政治的な求心力がはたらく。

歴史

ボバース夫妻が、ボバース概念、ボバースコンセプトを確立した経緯は下記の通り。

ユダヤ人であったボバース夫妻は、1933年のドイツの総統誕生から逃れ、イギリスへ亡命する。

ロンドンで仕事をし、ベルタの臨床をカレルが神経生理学の立場から解釈・体系化を試みた。

亡くなるまえに曰く

常に中枢神経系の協調性を追求すること
実用的な機能に必ず結びつけること
感覚・知覚・行動適応の問題を運動障害と同時進行に治療すること

中枢神経の概念が十分に治療に反映される前の時代には、斬新であったので多くの治療家に影響を与えた。

特に、脳の可塑性に働きかけるという概念は、これまでにないアプローチを臨床家に施行させた。

真実はともかくとして、パッケージ化され抽象化された治療概念の組み合わせが、大まかに効果的、時に的確であったので、臨床向きの概念として広がったとも解釈できる。

参考