エビデンス

提供:作業療法大百科事典OtWiki

実験によって得られた結果が、ある原因によるものであるかどうかを保証する根拠となる情報。

作業療法を含む医療の現場では特にエビデンスという場合には、実践の根拠となりうる研究や論文を指してつかわれていることが多い。

なぜエビデンスは重要か

何かを実践していて事故がおこったときに問われるのは「なぜそれを行ったのですか?」という妥当性である。

実践にエビデンスがあれば、それは即座にクリアになる。

よって、作業療法士にとって、エビデンスは重要である。なぜ、それを実行したのか、と問われた時に、きちんと根拠があることが、プロとしての責任を果たすことにつながるからである。

もし、あなたが、選択肢が複数ある中からなぜそれを選択したのかについて問われ、説明するときに、無根拠では説得力がないし、納得も得られない。

説明にはある程度の妥当性が要求される。

その妥当性を保証してくれるものが、エビデンスである。

エビデンスがあれば、作業療法士の場合であればその介入にはエビデンスがあるからやるべきだし、その介入には効果がないというエビデンスがあるからやるべきではない、などの判断に迷わなくても済むようになる。

余計な心配をしなくて済むということも、エビデンスが重要であると言われる理由の一つである。

作業療法においても、エビデンスに基づく作業療法介入が提唱、重要視されている。

これから、当たり前のものとなっていくことを考えると、きちんとエビデンスが理解できていないと作業療法士としての振る舞いを適切に管理することが非常に難しくなっていく。

即使えるエビデンス

推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類-日本理学療法士協会

リハビリテーションの関するエビデンス資料

エビデンスは誰でも扱える

新人でもベテランでもエビデンスの前には等しく平伏す。

つまり、きちんとした実践を主張したいのであれば、エビデンスに基づいてしっかりと主張をすればそれが最優先されるし、それができない施設は科学性を放棄した運営を行っていることになるので、社会的に存続することができない。

ちゃんと真面目に頑張りたい人の味方がエビデンスであるし、作業療法対象者の利益を最大化する上で欠かすことができないのがエビデンスであると言える。

強弱

エビデンスにはその実験方法によって強弱がある。

得られた結果が、本当に原因によって左右されるかどうかをはっきりと述べるためにはできる限り偶然性や他の恣意的な要因を可能な限り排除する必要がある。

本当に原因と結果のみに由来する現象であると証明できれば、それは強いエビデンスがあると言える。

統計学は、直接的に原因と結果のみを抽出できない場合にもその検証ができる方法を提供する。

そして、どの方法を使うかによってエビデンスレベルが変わってくることになる。

エビデンスレベル

エビデンスの強弱によって、ランク付けをしたものをエビデンスレベルという。

作業療法においては、エビデンスレベルが高いほど、実施することが推奨され、エビデンスレベルが低いほどに禁忌となる。

エビデンスと実験種類

エビデンスレベルが低い順番に紹介する。

観察研究・症例報告・ケースシリーズ

処置前後の比較などの前後比較・対象群を伴わない研究

ケースコントロール研究(症例対照研究)

コホート研究

クロスオーバー試験(前向き研究)

ランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)

ランダム化比較試験をまとめて解析したメタアナリシス

普段の臨床をエビデンスにすることの重要性

普段の臨床において実践していることの効果をエビデンスとして示せることはとても大切である。

そして、そのためには普段の臨床をしながら、エビデンスを示すために必要なアクションを起こせることが必要である。

そのためには、エビデンスレベルを高めるためには、普段の臨床の介入効果を説明するものにはどのような要素について言及する必要があり、何を説明すれば出来事の因果関係を説明することができるのかについて、述べなければならない。

エビデンスとなるように、普段の臨床をきちんと証明するためには、必要な知識を学ぶことが必要である。

そのために、otwiki.orgを活用したり、大学などの教育機関を利用すると良い。

作業療法は慢性的エビデンス不足

作業療法には、確たるエビデンスがないまま経験的に行われている臨床介入が多く存在する。

きちんとエビデンスについて勉強している人ならわかると思うが、これは作業療法に効果がないという意味ではない。エビデンスがないというのは、効果が分からないということである。

つまり、効果がないというエビデンスもなければ、効果があるというエビデンスもない。

あるともないともはっきり言えないのである。

混沌が混沌のままに存在する状況であると言える。

そこに対して、作業療法士は、きちんと明らかにしようとする姿勢でもって、自分の臨床を作業療法のエビデンスの一つとしてどんどん発表していく使命が、作業療法士の対象者に対してある。

作業療法の慢性的エビデンス不足は、今後改善されることが必要である。

効果があるものについては、はっきりとあるといい、ないものはないという。

それだけのシンプルな話が、エビデンス議論の本題本質であると言える。