介護老人保健施設

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略称は、老健である。

医師が在中しているのが、大きな特徴である。これは医療と介護の橋渡し役という創設コンセプトに由来する。

入所やショートステイ以外の機能に関しては、通所リハビリテーションを参考のこと

また、入所者の在宅復帰が主たるコンセプトであり、在宅復帰に向けたリハビリテーションが必要な方が利用する施設である。

厚生労働省の定義[1]

介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練 その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。
(介護保険法第8条第28項)

厚生労働省資料

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf

定義の解釈

基本的には、居宅で生活できるようにするためのリハビリテーション施設である。

サービス内容

在宅復帰を目指して、3〜6ヶ月という限定された入居期間で自宅に帰ることが目標となっている。

在宅復帰に向けたリハビリテーションの提供や高価ではない医療的ケアや、看護、介護が提供される。

ロングステイや入所と呼ばれる上記のサービスの他のサービスも併設可能となっており、通所リハビリテーション( デイケア)、ショートステイ、ホームヘルプサービスなどを提供したり、訪問事業が存在する場合もある。

リハビリテーション

最低週二回の機能訓練のリハビリテーション(うち1回は集団でも可能)を行うことが定められている。

リハビリテーション(20〜30分)× 2回以上 / 週
基準省令第17条は、介護老人保健施設の入所者に対する機能訓練については、医師、理学療法士若しくは作業療法士又は言語聴覚士(理学療法士又は作業療法士に加えて配置されている場合に限る。)の指導のもとに計画的に行うべきことを定めたものであり、特に、訓練の目標を設定し、定期的に評価を行うことにより、効果的な機能訓練が行えるようにすること。

 現在、週2回は行うべきとなっているが、時間規定は廃止されている。[2]なお、機能訓練は入所者1人について、少なくとも週2回程度行うこと。[3]

週2回以上の機能訓練を行うこと(集団リハビリテーションのみだけではなく、利用者の心身の状態を適切に評価した上で、必要なリハビリテーションを提供すること)
※ 上記のうち1回は集団リハビリテーションの実施でも構わない。

また、入所してから3ヶ月以内の間であれば、週3回以上の短期集中リハビリテーションを受けることが可能になる。

実施手順

法令により以下のような手順で行うことが定められている。

計画書の作成
医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士その他の職種の者が共同して、入所者ごとのリハビリテーション実施計画を作成する。

リハビリテーション実施計画の作成に当たっては、施設サービス計画との整合性を図るものとする。 なお、リハビリテーション実施計画に相当する内容を施設サービス計画の中に記載する場合は、その記載をもってリハビリテーション実施計画の作成に代えることができるものとすること。

実施及び記録

入所者ごとのリハビリテーション実施計画に従い医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士がリハビリテーションを行うとともに、入所者の状態を定期的に記録すること。

評価及び計画の見直し

入所者ごとのリハビリテーション実施計画の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて当該計画を見直すこと。

情報の共有

リハビリテーションを行う医師、理学療法士、作業療法士又は 言語聴覚士が、看護職員、介護職員その他の職種の者に対し、リハビリテーションの観点から、日常生活上の留意点、介護の工夫等の 情報を伝達すること。

ターミナルケア加算

一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断された 入所者について、本人又はその家族等の同意を得て、入所者のターミナルケア に係る計画を作成し、医師、看護師、介護職員等が共同して、随時、本人又 はその家族への説明を行い、同意を得てターミナルケアを行っていること
死亡日以前4日以上30日以下 160単位/日
死亡日前日及び前々日 820単位/日 (療養型老健: 850単位/日
死亡日 1,650単位/日 (療養型老健: 1,700単位/日)

初期加算

入所日から起算して30日以内に限る
30単位/日

入所前後訪問指導加算

入所期間が1月を超えると見込まれる者の入所 予定日前30日以内又は入所後7日以内に退 所後生活する居宅を訪問し、退所を目的とした 施設サービス計画の策定及び診療方針の決定 を行った場合(1回を限度)
施設サービス計画の策定及び診療方針の決定を行った場合 450単位
施設サービス計画の策定及び診療方針の決定にあたり、医師、看護職員、支援相談員等が会議を行い、生活機能の改善目標を定め、退所後の生活に係る支援計画を策定した場合 480単位

退所前訪問指導加算

入所期間が1月を超えると見込まれる入所者の退所に先立って退所後生活する居宅を訪問し、入所者及びその家族 等に対して退所後の療養上の指導を行った場合 (入所中1回、療養型老健においては必要性が認められる場合2回を限度)
460単位

退所後訪問指導加算

退所後30日以内に居宅を訪問し、入所者及びその家族等に対して療養上の指導を行った場合 (退所後1回を限度) 
460単位

退所時指導加算

・入所期間が1月を超える入所者が退所し、その居宅において療養を継続する場合において、退所時に入所者及び家 族等に対して退所後の療養上の指導を行った場合(1回を限度)
・又は、退所が見込まれる入所期間が1月を超える入所者を居宅において試行的に退所させる場合において、入所者 及びその家族等に対して療養上の指導を行った場合 (最初の試行的な退所を行った月から3月の間に限り、1月に1回を限度)
400単位

退所時情報提供加算

入所期間が1月を超える入所者が退所し、その居宅において療養を継続する場合において、退所後の主治の医師に対して、入所者の同意を得て、診療状況を示す文書を添えて紹介を行った場合(1回を限度)
500単位

退所前連携加算

入所期間が1月を超える入所者が退所し、その居宅において居宅サービス又は地域密着型サービスを利用する場合、 入所者の退所に先立って入所者が利用を希望する居宅介護支援事業者に対して、入所者の同意を得て、入所者の 診療状況を示す文書を添えて入所者の居宅サービス又は地域密着型サービスに必要な情報を提供し、かつ、居宅介 護支援事業者と連携して退所後の居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行った場合(1回を限度)
500単位

老人訪問看護 指示加算

入所者の退所時に、介護老人保健施設の医師が、診療に基づき、訪問看護、指定定期巡回・随時対応型訪問介 護看護等の利用が必要であると認め、入所者の選定する訪問看護ステーション等に対して、入所者の同意を得て、指示書を交付した場合(1回を限度)
300単位

栄養マネジメント 加算

• 常勤の管理栄養士を1名以上配置
• 入所時に栄養状態を把握し、医師、管理栄養士その他の職種が共同して栄養ケア計画を作成
• 入所者ごとの栄養ケア計画に従い栄養管理を行うとともに、入所者の栄養状態を定期的に記録
• 入所者ごとの栄養ケア計画の進捗の定期的な評価し、必要に応じて見直しを実施
14単位/日

経口移行加算

医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士、その他の職種が共同して、現に経管により食事を摂取している 入所者ごとに経口による食事の摂取を進めるための経口移行計画を作成し、計画に従い医師の指示を受けた管理栄 養士又は栄養士が栄養管理を、言語聴覚士又は看護職員が支援を行った場合 (原則として計画作成日から180日以内に限る)
28単位/日

経口維持加算 (I)

医師又は歯科医師の指示に基づき、医師、歯科医師、管理栄養士その他の職種が共同し、入所者の栄養管理をする ための食事の観察及び会議等を行い、摂食機能障害を有し誤嚥が認められる入所者ごとに経口維持計画を作成し、 計画に従い、医師又は歯科医師の指示を受けた管理栄養士又は栄養士が、継続して経口摂取を進めるための特別な 管理を行った場合

(原則として計画作成日から180日以内に限り、1月につき)

400単位/月

経口維持加算 (II)

協力歯科医療機関を定めている指定介護老人福祉施設が、経口維持加算(I)を算定している場合であって、入所者 の経口による継続的な食事の摂取を支援するための食事の観察及び会議等に、医師(指定介護老人福祉施設の人 員、設備及び運営に関する基準第2条第1項第1号に規定する医師を除く。)、歯科医師、歯科衛生士又は言語聴 覚士が加わった場合

(原則として計画作成日から180日以内に限り、1月につき)

100単位/月

口腔衛生管理体制加算

・歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔ケアに関する技術的助言及び指導 を月1回以上実施
・上記技術的助言及び指導に基づき、入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画を作成
30単位/月

口腔衛生管理加算

・歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、口腔ケアを月4回以上実施
・口腔機能維持管理体制加算を算定
110単位/月

療養食加算

• 疾病治療の直接手段として、医師の発行する食事箋に基づき療養食を提供した場合 
• 食事の提供が管理栄養士又は栄養士によって管理されていること
• 年齢・心身状況等によって適切な栄養量・内容の食事を提供していること
18単位/日

在宅復帰支援機能加算

・在宅復帰率が30%超であること
・退所後30日以内に居宅を訪問し、又は指定居宅介護支援事業者から情報提供を受けることにより、当該退所者の居宅における生活が1月以上継続する見込みであることを確認し、記録していること
・入所者の家族との連絡調整を行っていること
・入所者が利用を希望する指定居宅介護支援事業者に対して、必要な情報提供、退所後の居宅サービスの利用に関する調整を行っていること
5単位/日

認知症専門ケア加算

日常生活に支障を来すおそれのある症状若しくは行動が認められることから介護を必要とする認知症の者に対し、専門的な認知症ケアを行った場合
(Ⅰ) 入所者総数のうち、対象者の割合が50%以上 且つ 認知症介護実践リーダー研修修了者を、対象者が20人未満の場合は1人、20人以上の場合は10人ごとに1人以上配置 3単位/日
(Ⅱ)(Ⅰ)の要件を満たし、かつ認知症介護指導者研修修了者を1人以上配置 且つ 介護職員、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定 4単位/日

認知症行動・ 心理症状 緊急対応加算

認知症の行動・心理症状が認められ、在宅での生活が困難であり緊急に入所することが適当と医師が判断した者に対し、介護保健施設サービスを行った場合(入所日から7日を限度)
200単位/日

認知症情報提供加算

過去に認知症の原因疾患に関する確定診断を受けておらず、認知症のおそれがあると医師が判断した入所者であっ て、施設内での診断が困難であると判断された者について、当該入所者又はその家族の同意を得た上で、診療状況 を示す文書を添えて、認知症疾患医療センター等に紹介を行った場合(入所中1回を限度)
350単位

地域連携診療計画情報提供加算

大腿骨頸部骨折又は脳卒中について、医科診療報酬の所定の点数を算定して保険医療機関を退院した入所者に 対し、地域連携診療計画に基づいて作成された診療計画に基づき、入所者の治療等を行うとともに、入所者の同意 を得た上で、当該退院した日の属する月の翌月までに、地域連携診療計画管理料を算定する病院に診療情報を文 書により提供した場合(1回を限度)
300単位

サービス提供体制強化加算

介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が60%以上 18単位/日
介護職員の総数のうち、介護福祉士の占める割合が50%以上 12単位/日
看護・介護職員の総数のうち、常勤職員の占める割合が75%以上 6単位/日
短期入所療養介護又は介護老人保健施設の利用者等を直接処遇する職員の総数のうち、 勤続年数3年以上の者の占める割合が30%以上 6単位/日

利用に際して

介護保険の枠組みを利用する場合には、ケアマネジャーによるケアプランの中に介護老人保健施設の利用が組み込まれていることが必要となる。

入所条件

原則65歳以上 かつ 「要介護1」以上の介護認定

利用料金等

公的サービスの位置づけであるため月額利用料は介護保険の利用で10〜20万円前後で、かつ住居費や食費の減免を受けることができる場合がある。介護保険が適用されることで 1〜3割負担で利用できる。

入所申し込み

施設に直接申し込む。

良い施設の見極め方

在宅復帰率の数字は一応参考になる。

ただし、数字のマジックは存在するので、一旦家に帰って再入所も。

デメリット

高額医療を受けることはできない

介護保険の枠組みでの施設となるため、医療保険との併用ができない。

そのため、高額な薬を利用することは、施設側が経営上の理由から容認できないことが多い。

つまり、医療の枠組みでなければ受けることができない治療行為が存在するということは利用の前に知っておく必要がある。

個人の空間は確保しづらい

基本的に寝室に当たる部分は、四人部屋が普通で他者と空間を共有することになる。

個室や2人部屋は、存在しても別途有料となっているため、資金に余裕がない場合は個室を利用することは難しい。

また施設によっては、デイルームは存在しても、個人がゆったり過ごせるような空間は存在しない場合も多い。

その辺りは、病院と共通しており、これは、介護老人保健施設は一時的な生活空間であり、終の住処ではないという建前にあるのかもしれない。

退所先

入所で利用する場合は、介護老人保健施設は、一定期間(3〜6ヶ月)を経過すると退所する方向で調整される。

自宅などを想定することが多いかもしれないが、実際には有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅なども有力な受け皿である。

介護老人保健施設の実際

リハビリテーション目的の一時的な入所先という位置づけではあるが、利用を繰り返すことで、実質特養の代用として使われる場合が現実的には相当数いると推定される。

これは特養の空きが無いことが原因であり、需要に対して供給が不足している現状がそのまま続いていることに由来する、現場のひずみであると言える。