自己決定
自分で物事を決めること。またそのプロセス。
原始的な環境はもちろん、自由な社会や資本主義社会においては、自己決定の能力が社会での生きやすさを大きく左右する。
原則として、作業療法は対象者の自己決定を基盤としている。
作業療法対象者と自己決定
すなわち自分の人生にとって自分がより良いと考えるものを自ら選び取ろうとする力である。
そして、その決定に基づく責任を自ら取る、自分自身の人生に対する責任を自分で負うことである。
これは、自己維持・セルフコントロールの能力に直結し、生活の自立に大きく影響する要素である。
自分で選び、自分で決める。
作業療法は、そうした自己決定のプロセスと自己決定そのものを、多面的な関わりの中で支援する。
例えどの領域であっても、そうである。
インフォームドコンセントは医師か、それを行うセラピストが必ず行うべきである。
そのようにして、適切な自己決定が行えるようにしてこそ、作業療法士はリハビリテーションを行うことができる。
作業療法士と自己決定
作業療法を対象者に提供する、作業療法士にとっても自己決定は大きなテーマである。
自らが評価で得た情報をもとにして、自分で最適と考える治療計画を立案し、それを対象者に提案して了承を得なければならない。
そのプロセスにはエビデンスに基づく自己決定を繰り返して行うことが欠かせないのである。
つまり、作業療法士は自己決定ができないと、仕事を行うことがとても難しい。
マニュアル通りの仕事に終始したいと思っても現実的な課題がそれを許さないし、それでは解決しない問題が山積していくことになる。
「自分は向いていないかもしれない」と考える多くの作業療法士を悩ませている大きな要因の一つである。
作業療法士の業務に指摘されないと気づけない要素でもあり、指摘されても修正の難しい要素である。
しかし、長期間かけて根気強く取り組めば、必ず修正が可能な生活習慣でもある。
自己決定を困難にする要因
その人自身が自分で物事を決めることから逃れている場合においては、周りがいくら促しても自己決定を避け続けることがある。
こうした人々が自己決定を自分の力で行えるようになるまでには、非常に多くの時間や関わりが必要になるので投入するべき時間やコストは長期間で根気強く行うことが必要である。
十分な情報がないと自己決定できないと考えられているが、情報過多で決められないことも増えている。
また、過度に失敗を恐れたり、ゼロリスク志向で「本当はどうしたいのか」に対して目を向けることができない人が増えている。