生活行為向上リハビリテーション実施加算
日本作業療法士協会が推進する生活行為向上マネジメント(MTDLP)に基づく、介護保険法上の加算制度である。
特に作業療法のコンセプトに関わる制度であるため、改めて記事を作成する。
実施の為の要件
当加算を実施するためには作業療法士等の療法士が、研修を受けて資格を取得する必要がある。
MTDLP研修会を修了している作業療法士であれば、生活行為向上リハビリテーション加算が行える。[1]
生活行為向上リハビリテーション実施加算について[2]
活動の観点から、生活行為の内容の充実を図るための目標及び当該目標を踏まえたリハビリテーションの実施内容等をリハビリテーション実施計画にあらかじめ定めた上で、加齢等により低下した利用者の活動の向上を図るためのリハビリテーションの提供を評価するため、生活行為向上リハビリテーション実施加算を設けた。
なお、活動と参加の観点からは、居宅からの一連のサービス行為として、買い物やバス等の公共交通機関への乗降などの行為に関する指定訪問リハビリテーションを提供することも重要である。
(介護予防)通所リハビリテーションでの加算
通所リハビリテーション(デイケア)、または、介護予防通所リハビリテーションにおける生活行為向上リハビリテーション実施加算については、通所リハビリテーションの記事を参照のこと。
通所リハビリテーション#生活行為向上リハビリテーション実施加算
法令等
1 生活行為向上リハビリテーション実施加算の考え方
生活行為とは、個人の活動として行う排泄、入浴、調理、買物、趣味活動等の行為をいう。生活行為向上リハビリテーションは、加齢や廃用症候群等により生活機能の一つである活動するための機能が低下した高齢者や急性増悪により生活機能が低下し、医師がリハビリテーションの提供が必要であると判断した者に対し、起居や歩行、排泄、入浴などのADL、調理、買い物、趣味活動 などのIADLなどの生活行為の内容の充実を図るため、その能力の向上について別紙様式5を作成し、その介入方法及び介入頻度、時間等、生活行為の能力の向上に資するプログラムを作成、計画的に実施するものである。
2 生活行為向上リハビリテーションを実施する上での留意事項
イ 目標達成後に自宅での自主的な取組や介護予防・日常生活支援総合事業に おける第一号通所事業や一般介護予防事業、地域のカルチャー教室や通いの場、通所介護などに移行することを目指し、6月間を利用限度に集中的に行うこと。
ロ 個人の活動として行う排泄するための行為、入浴するための行為、調理するための行為、買い物をするための行為、趣味活動など具体的な生活行為の 自立を目標に、心身機能、活動、参加に対し段階的に実施する6月間のリハビリテーション内容を別紙様式5にあらかじめ定めた上で、実施すること。
ハ 実施する際には、6月間を超えて引き続き指定通所リハビリテーション又は指定介護予防通所リハビリテーションの提供を受けた場合に減算があることを、生活行為向上リハビリテーション計画の作成時に、利用者又はその家族、介護支援専門員に十分に説明し、同意を得ること。
ニ 生活行為向上リハビリテーション実施計画は、専門的な知識や経験のある作業療法士又は生活行為向上リハビリテーションに関する研修を受けた理学療法士、言語聴覚士が立案、作成すること。
ホ 事業所の医師が、おおむね月ごとに開催されるリハビリテーション会議で、生活行為向上リハビリテーション実施計画の進捗状況について報告することが望ましく、評価に基づく利用者の能力の回復状況、適宜適切に達成の水準やプログラムの内容について見直しを行い、目標が効果的に達成されるよう、 利用者又はその家族、構成員に説明すること。また、生活行為向上リハビリテーションを提供する場合は、目標が達成する期限に向けて、計画の進捗の評価や利用者又はその家族に生活行為を行う能力の回復程度など状況の説明が重要であることから1月に1回はモニタリングを行い、別紙様式5を見直し、医師から利用者又はその家族に対する説明し、同意を得ることが望ましい。
へ当該リハビリテーションは、利用者と家族のプログラムへの積極的な参加が重要であることから、生活行為向上リハビリテーション実施計画の立案に 当たっては、利用者及びその家族に生活行為がうまくできない要因、課題を解決するために必要なプログラム、家での自主訓練を含め分かりやすく説明を行い、利用者及びその家族にプログラムの選択を促すよう配慮し進め、生活行為向上リハビリテーションについて主体的に取り組む意欲を引き出すこと。
ト 目標の達成期限の前1月以内には、リハビリテーション会議を開催し、生活行為向上リハビリテーション実施計画及びそれに基づき提供したリハビリテーションの成果、他のサービスへの移行に向けた支援計画を、利用者又はその家族、構成員に説明すること。
3 生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定に関して
イ 生活行為のニーズの把握
別紙様式1を活用し、利用者がどのような生活行為をしてみたい、興味があると思っているのかを把握する。把握に当たっては、利用者の生活の意欲を高めるためにも、こういうことをしてみたいという生活行為の目標を認識できるよう働きかけることも重要である。
ロ 生活行為に関する課題分析
a 利用者がしてみたいと思う生活行為で、一連の行為のどの部分が支障となってうまくできていないのかという要因をまず分析すること。例えば、トイレ行為であれば、畳に座っている姿勢、立ち上がり、トイレに行く、トイレの戸の開閉、下着の脱衣、便座に座る動作、排泄、後始末、下着の着衣、元の場所に戻る、畳に座る等の一連の行為を分析し、そのどこがうまくできていないのかを確認すること。
b うまくできていない行為の要因ごとに、利用者の基本的動作能力(心身機能)、応用的動作能力(活動)、社会適応能力(参加)のどの能力を高めることで生活行為の自立が図られるのかを検討すること。基本的動作能力については、起居や歩行などの基本的動作を直接的に通所にて訓練を行い、併せて居宅での環境の中で1人でも安全に実行できるかを評価すること。応用的動作能力については、生活行為そのものの技能を向上させる反復練習、新たな生活行為の技能の習得練習などを通して、通所で直接的に能力を高める他、住環境や生活で用いる調理器具などの生活道具、家具など生活環境について工夫すること等についても検討すること。通所で獲得した生活行為が居宅でも実行できるよう訪問し、具体的な実践を通して評価を行い、実際の生活の場面でできるようになるよう、支援すること。また、利用者が家庭での役割を獲得できるよう、家族とよく相談し、調整すること。社会適応能力については、通所の場面だけではなく、居宅に訪問し家庭環境(家の中での環境)への適応状況の評価、利用者が利用する店で の買い物や銀行、公共交通機関の利用などの生活環境への適応練習、地域の行事や趣味の教室などへの参加をするための練習をするなど、利用者が1人で実施できるようになることを念頭に指導すること。
c 利用者の能力だけではなく、利用者を取り巻く家族や地域の人々、サービス提供者に対しても、利用者の生活行為の能力について説明を行い、理解を得て、適切な支援が得られるよう配慮すること。
ハ 別紙様式5(生活行為向上リハビリテーション実施計画)の記載
a 利用者が、してみたいと思う生活行為に関して、最も効果的なリハビリテーションの内容(以下「プログラム」という。)を選択し、おおむね6月間で実施する内容を心身機能、活動、参加のアプローチの段階ごとに記載すること。
b プログラムについては、専門職が支援することの他、本人が取り組む自主訓練の内容についても併せて記載すること。また、プログラムごとに、おおむねの実施時間、実施者及び実施場所について、記載すること。
c 支援の頻度は、リハビリテーションを開始してから3月間までの通所 を主体とする通所訓練期はおおむね週2回以上、その後目標を達成する6月間の期限まで、終了後の生活を視野に入れ、訪問等組み合わせて訓練をする社会適応期はおおむね週1回以上訓練を行うこと。
d プログラムの実施に当たっては、訪問で把握した生活行為や動作上の 問題を事業所内外の設備を利用し練習する場合には、あらかじめ計画上に書き込むこと。
e 通所で獲得した生活行為については、いつ頃を目安に、利用者の居宅を訪問し、当該利用者の実際の生活の場面で評価を行うのかもあらかじめ記載すること。
f 終了後の利用者の生活をイメージし、引き続き生活機能が維持できるよう地域の通いの場などの社会資源の利用する練習などについてもあらかじめプログラムに組み込むこと
ニ 生活行為向上リハビリテーションの実施結果報告計画実施期間の達成1ヵ月前には、リハビリテーション会議を開催し、別紙様式5に支援の結果を記入し、本人及び家族、構成員に支援の経過及び結果を報告すること。また、リハビリテーション会議にサービスの提供終了後に利用するサービス等の担当者にも参加を依頼し、サービスの提供終了後も継続して実施するとよい事柄について申し送ることが望ましい。
ホ その他生活行為向上リハビリテーションを行うために必要な家事用設備、各種日常生活活動訓練用具などが備えられていることが望ましい。
へ 要介護認定等の更新又は区分の変更に伴う算定月数の取扱い
要介護認定等の更新又は区分の変更により、要介護状態区分から要支援 状態区分又は要支援状態区分から要介護状態区分となった利用者に対して、生活行為向上リハビリテーションの提供を継続する場合には、算定月数を通算するものとする。なお、作成した生活行為向上リハビリテーション実施計画を活用することは差し支えないが、利用者の心身の状況等を鑑み、適時適切に計画は見直すこと。