「膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament, ACL)」の版間の差分

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=== 身体診察 ===
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医師は[[膝関節]]を直接触診し、腫れや不安定感、[[膝関節]]の[[関節可動域]]の制限を確認する。特定の徒手検査(ラックマンテスト、前方引き出しテスト)を行い、ACLの安定性を評価する。
医師は[[膝関節]]を直接触診し、腫れや不安定感、[[膝関節]]の[[関節可動域]]の制限を確認する。特定の徒手検査(ラックマンテスト、前方引き出しテスト)を行い、ACLの安定性を評価する。
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=== 画像検査 ===
=== 画像検査 ===

2024年6月10日 (月) 09:18時点における版


膝前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament, ACL)は、膝関節内で重要な役割を果たす靭帯の一つである。

大腿骨脛骨を連結し、膝関節の前後および回旋の安定性を維持する。ACLは、スポーツ活動や日常生活でにかかる負荷を制御し、関節の正しい動きを保つために不可欠である。

概要

膝前十字靭帯(ACL)は、膝関節の安定性を維持するために重要な靭帯であり、その損傷はスポーツ活動や日常生活に大きな影響を与える。ACL損傷は、急激な方向転換、ジャンプの着地、直接の衝撃、過伸展などによって引き起こされる。診断は、問診、身体診察、画像検査を通じて行われ、治療は保存療法や手術療法が選択される。予防には、筋力強化、柔軟性向上、正しい運動技術の習得、適切な装備の使用が重要である。ACLの健康を維持することで、スポーツ活動や日常生活を安全かつ快適に続けることが可能となる。

ACLの解剖学

ACLは、膝関節内に位置する靭帯であり、大腿骨の内側顆から脛骨の前部に向かって斜めに走る。

以下にACLの解剖学的特徴を示す。

構造

ACLは、強力な繊維状組織で構成されており、膝関節の前後の動きと回旋の制御に重要である。ACLは2つの束(前内側束と後外側束)から成り、それぞれ異なる角度で関節を安定させる。

位置

ACLは膝関節の中央に位置し、他の靭帯(後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯)とともに膝の安定性を支える。ACLは、特に膝の前方への移動と回旋を防ぐ役割を果たす。

ACL損傷の原因

ACL損傷は、スポーツ活動や事故などにより発生することが多い。以下に主な原因を示す。

急激な方向転換

サッカーバスケットボールなどのスポーツにおいて、急激な方向転換や停止がACL損傷の一般的な原因である。これらの動きは、膝に過度の回旋力をかけることがある。

ジャンプの着地

バレーボールや体操などで、高い場所からのジャンプの着地時に膝に過度の力がかかることでACLが損傷することがある。

直接の衝撃

フットボールラグビーなどのコンタクトスポーツで、膝に直接的な衝撃が加わることによりACLが損傷することがある。

過伸展

膝が過度に伸展される動きもACL損傷の原因となる。これは、スキー体操などのスポーツで発生しやすい。

ACL損傷の症状

ACL損傷の症状は、損傷の程度や個人の状態によって異なる。以下に一般的な症状を示す。

急性の痛みと腫れ

ACLが損傷した直後には、に急性の痛みと腫れが生じることが多い。損傷部位に血液が集まり、関節が腫れる。

関節の不安定感

ACL損傷により膝関節が不安定になり、歩行や走行中に膝が崩れるような感覚を経験することがある。

可動域の制限

膝の痛みと腫れにより、関節の可動域が制限されることがある。膝を完全に伸ばしたり曲げたりすることが難しくなる。

異音

損傷の際に、「ポップ音」を感じることがある。この音は、靭帯が断裂した際の音であることが多い。

ACL損傷の診断

ACL損傷の診断は、医師による問診、身体診察、および画像検査を通じて行われる。

問診

医師は患者の怪我の状況や症状を詳細に聞き取り、損傷の可能性を評価する。

身体診察

医師は膝関節を直接触診し、腫れや不安定感、膝関節関節可動域の制限を確認する。特定の徒手検査(ラックマンテスト、前方引き出しテスト)を行い、ACLの安定性を評価する。

検査方法

前方引き出しテスト

ラックマンテスト

ピボットシフトテスト

画像検査

ACL損傷を確認するために、MRI(磁気共鳴画像)やX線検査が行われる。MRIは、軟部組織の損傷を詳細に評価するために有効である。

ACL損傷の治療

ACL損傷の治療は、損傷の程度と患者の活動レベルに応じて異なる。以下に代表的な治療法を示す。

保存療法

軽度のACL損傷や手術を避けたい場合には、保存療法が選択されることがある。これには以下が含まれる。

  • **安静**: 損傷直後は膝を安静に保ち、負荷をかけないようにする。
  • **アイシング**: 腫れを抑えるために、定期的に氷を当てる。
  • **圧迫**: 弾性包帯を使用して膝を圧迫し、腫れを抑える。
  • **挙上**: 膝を心臓の高さより上に挙げて腫れを軽減する。
  • **リハビリテーション**: 筋力と柔軟性を回復するための理学療法を行う。

手術療法

重度のACL損傷やスポーツ復帰を希望する場合には、手術が検討される。ACL再建術が一般的であり、損傷した靭帯を再建するために、他の部位から採取した腱を移植する。

  • 手術後のリハビリテーション

手術後は、膝の機能を回復するためにリハビリテーションが不可欠である。理学療法士や作業療法士の指導の下で、筋力強化や柔軟性の向上、関節の可動域の回復を図る。

ACL損傷の予防

ACL損傷を予防するためには、以下のような対策が有効である。

筋力強化

大腿四頭筋ハムストリングスなどの下肢筋力を強化することで、膝関節の安定性を向上させる。

柔軟性向上

定期的なストレッチを行い、下肢の柔軟性を向上させる。特にハムストリングスやふくらはぎのストレッチが重要である。

正しい運動技術

スポーツ活動中には、正しい運動技術を習得し、膝に過度の負荷がかからないようにする。特にジャンプや方向転換の際の着地技術が重要である。

適切な装備

スポーツに応じた適切な装備(装具サポーターや適切なシューズなど)を使用し、の保護を図る。