統計学
統計学というのは傾向を見て、判断材料にするための知識体系。
確率に関する知識教養が欠かせないが、エビデンスの概念を正しく理解するために必要不可欠である。
エビデンスに基づいた作業療法を作業療法士が行うためには、統計学が欠かせない。
統計学の基本と作業療法士の学習メリット
統計は標本を考える。
標本とは、傾向や性質を調べる対象のことである。
全部調べれたら確実ではある。しかし、手間が膨大となると、そうなんども調査することは出来ない。
しかし、そんなことをしなくても同じような結果が得られるとしたら、その方が手間も時間もかからず、有限なリソースを有効に使うことが出来る。
統計学は、なるべく少ない手数や労力で全数調査と同じ成果や結果を目指す統計を学ぶ学問である。
俗な言い方をすれば、楽して成果を出す可能性をを身につけることが出来る学問である。
統計学を学ぶことは、情報をうまく使ってよりよい自己決定を行うためにも有意義である。
作業療法士は、普段の臨床を統計量でマネジメントしないと成果が測れないような事象を取り扱うことが多いので、本来必修するべき内容と言える。正しく学んで正しく使えば圧倒的に差が出る内容と言える。
また、エビデンスの高い論文は読むにも書くにも統計学の手法が必要になる。作業療法学の発展のためには欠かすことができない。
統計学を食わず嫌いしている作業療法士も多いのは事実であるが、人間には出来ることと出来ないことがある。出来る作業療法士が率先して身につけ、楽して成果を出す方法を作業療法対象者の利益として還元できるようにするより他にない。
統計学を勉強しておくと、年収にはそのうち影響を与えうる変化が出てくることは間違いない。
統計は集団の特徴を明らかにする
ある集まりがどういう性質を持っているのか、そこに何らかの因子を投入したとき、現れた変化が果たしてその因子によるものなのか。
統計学が理解できて使えると、そういう事象が扱えるようになる。
作業療法は、個人と集団の相互作用を治療的に用いるが、エビデンスを持つように分析するには、やはり作業療法士が一定の統計学のリテラシーを身につけておくことが必要である。
統計は科学的事実としてエビデンスに出来る
いちいち全数調査などしていられないという実際的な要因と、統計学の蓄積で全数調査が常に必要なわけでもないことが明らかとなっていることから、統計学を使って部分から全体を推察した成果は事実と同レベルで見なしてよいとされている。
逆に言うと、全数調査が不可能な事象や事例においても部分を対象とした標本の調査で、全体がわかったことにしてよいと言うことである。
もちろん統計学的な土台の上に基づいていればであるが、それでも全数調査が出来ないものからでも、それと同じように扱ってよい情報が得られるというのは、作業療法学にとっては大きなメリットである。また、作業療法学の知識を背景として臨床を行う作業療法士にとってもメリットが大きい。
必要最低限の作業療法士に必要な統計学
標本の母集団の特徴を浮かび上がらせるのが統計の存在意義である。
逆に言えば、母集団の特徴を知るための必要最低限の知識がありさえすれば、少なくとも論文は読める。
論文が読めるための必要最低限の統計学について紹介する。
基本用語
検定
標本同士の間で比較を行うことで母集団に差があるかどうかを調べる。仮説の判断に用いる。
危険率
(有意確率) 検定の結果が、母集団に差がない時に発生する確率のこと。母集団が同じなのに、結果が違うと言うこともあり得なくはないが、その可能性が極めて低い(多くの場合5%以下)の場合、母集団には差があるとみなしてよいとする。その場合を、「有意差あり」という。この違いは、意味のある違いですよ、というニュアンスである。
帰無仮説
否定するのが前提の仮説。上記の場合は、「母集団には差がない」が帰無仮説となる。ゆえに「差なし仮説」とも言う。
標本
母集団の一部。全数調査なんてできないので、一部分だけを調べることが多い。標本選びの方法はかなり重要。
母集団
本当は全数調査してでも調べたい調査対象の集団。直接母集団を調べられないときに、統計学は非常に大きな力を発揮する。
検定
両側検定と片側検定がある。
研究のデザインによってどちらの検定を用いるべきかは自ずと決定する。
両側検定の方が、検定条件が厳しくなる。
t検定
t検定とは、独立した2群の間における母集団の平均の差を検定する手法。
統計学うろ覚えでもなんとなく聞き覚えているのが、このt検定だったりするが、標本が違う集団に属していることを示すための手法ということさえわかっていればよい。