変形性膝関節症
変形性膝関節症は、変形性関節症の中でリハビリテーションの対象となることが多い主なものの一つである。
重症化すると、歩行が不能となり、日常生活の維持が困難となるため、人工関節置換術などが選択肢となる。作業療法士が、その他職種と協働してリハビリテーションにあたることも少なくない。
前提知識
膝関節についての知識が前提となる。
膝関節の項目を参照のこと。
ガイドライン
O脚
膝関節の内側部分の組織が、摩耗するなどして変形した状態。
両膝の間に、空間が生じることで、アルファベットのOになぞらえて、O脚と呼ばれる。
病理
性差:男女比は1:4で女性に多い
年齢:高齢はリスク要因
症状[1]
症状としては、炎症の結果として関節内に水がたまり、疼痛が発生するようになる。
症状が進行すると、次第に痛みがひどくなり実用性が失われていく事になる。
starting pain(立ち上がり痛や歩行開始時の疼痛) が主体で、歩行時の側方動揺の不安定感なども問題になる。
側方動揺では、外反膝では荷重時に内側に、また内反膝では外側に動揺する。内側滑膜の疼痛閾値は病期の進行に伴い低下し,滑膜は物理的刺激により容易に疼痛が発現する。[2]
病状と病期
次のように病期を分類できる。
初期
立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれる。
朝、歩き始めの「ひざの違和感」のみが長期間続くこともある。
本人の自覚症状以外、外的な初見がほとんど得られないことも多い。
中期
痛みが明確に自覚されるようになる時期で、生活への支障がで始める。
しゃがみ動作や、椅子などからの立ち上がり、正座や階段の昇降が困難となる。
触診してわかる程度に、関節の腫脹や熱感が明確になる。
骨同士の接触が感じられるようになる。
末期
日常生活への支障が到るところ見られるようになっている状態。
生活全体をマネジメントする視点から作業療法士の介入が必要な状態となっている。
具体的な状態としては、常時の疼痛や関節の著名な変形、膝関節のROM制限、歩行不能など、生活行為や生活の幅、QOLの面で多角的に非常に大きな影響が現れるようになる。
生活への影響
変形性膝関節症が重症化することにより、耐え難い痛みが生じるようになると、離床や歩行が困難となり、生活幅やADLの縮小などにより、QOLに直結し、活動性が低下し、寝たきりへと移行する原因となりうる。
変形性膝関節症のリスク
膝への負担が大きいと、変形性膝関節症の発生リスクを高める。
リスクとなりうる膝の負担は、以下のようなものがある。
使いすぎ、体重の増大、外傷など。
鑑別
歩行機能障害が現れている時には、腰部背柱管狭窄症などとの鑑別が重要である。
変形性膝関節症の治療
保存療法
変形性膝関節症がそこまで悪化していない場合や、高齢などの理由から手術の適応が困難な場合には、手術以外の方法を取りながら、様子を見たり、リハビリテーションを行うことで症状の進行を緩やかにすることをねらう。
保存療法の主な戦略は、日常生活指導,減量 対策,膝周囲筋力増強訓練,さらに装具療法など の保存療法が治療の基本となる。[2]
手術適応
変形性膝関節症が重症化すると、患者様の体力面等の問題がクリアできれば、手術適応となる。
主な術式は以下のようなものがある。
関節鏡手術
高位脛骨骨切り術(HTO)
人工関節置換術
高位脛骨骨切り術(HTO)
術前に両側支柱付き膝安定装具を装着させ,臨床症状の改善を確認することは HTO の治療効果を予測する指標となる。
変形性膝関節症のリハビリテーション
リハビリテーション戦略
変形性膝関節症のリハビリテーション戦略の方向性は大きく、下記の3つである。
・リスクとなりうるような生活習慣を変化させることで、進行を予防することを目指す。 ・膝関節を適度に動かすことで、関節内を栄養することで、関節内の損傷の回復を図る。 ・関節の変形や破壊をとめ、回復を促すために、膝関節への負担を減らす。
訓練・手技
等尺性大腿四頭筋訓練法
Muscle Settingを用いることで、膝関節への負荷を最小限に抑えながら、大腿四頭筋の筋力訓練を行うことができる。
踵が20cm離れるぐらい挙上する。足関節は中間位で,膝を完全伸展させ大腿四頭筋の緊張が高まるようにする。5秒間上げて降ろし,5秒間休む。この間,息を止めないようにする。1~2kgの負荷をかけてもよい。1日5回の上下運動を1セット行う。反対側の膝を立てて腰に負担をかけないようにする。本法は体重がかからず,膝関節の動きも伴わないので関節を痛めることはない.変形性膝関節症のリハビリテーションリハビリテーション医学 2005;42:239-262
大腿四頭筋の中の大腿直筋は、腹臥位が最も効果が高い可能性が指摘されている。[3]
また、足関節の背屈位で行う方が出力高まることが報告されている。[2]
歩行訓練
実用に向けた訓練としてだけでなく、総合的な耐久性を向上させるための手段として重要。
必要に応じて、杖や歩行器などを使用して荷重を減らすなどする。
生活指導
膝への負荷を減少させることができるような、下記のような指導が有効。
動作変更
歩く速度をゆっくりにする、階段を降りるのを一段ずつにする
体重減量
装具の使用
装具、サポーターを使用することで膝関節の安定性を高め、負担と頭痛を減らすことができる。
変形性膝関節症の著名人
和田アキ子[4]手術を担当したのは、人工関節手術の名医、苑田会人工関節センター病院の杉本和隆医師
インターネット上で無料で読めるリファレンスなど
変形性膝関節症のリハビリテーションリハビリテーション医学 2005;42:239-262