認知症

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2020年10月1日 (木) 11:32時点におけるOtfighter (トーク | 投稿記録)による版 (→‎認知症の作業療法)

認知症においては、生活の困難さが時間の経過とともに増していき、本人ができないことがどんどんと増えていくのに従って、周囲の介助や介護の負担が増大していく病気であることが一つ問題である。

しかし、それにもまして、介助や介護の負担が単純に増えるのみならず、進行の過程でできないことを認められない当事者の方が自身の病気と折り合う過程で、自身の周囲の人との関係が不可逆的に破壊されて行くことも少なくないのが、この疾患の非常に恐ろしいところである。

認知症に必要な理解と支援

そうならないためには、

1 認知症となった本人が自分自身が認知症であるという事実をごまかしたり周囲から隠そうとしないこと。

2 周囲の人は認知症となった人がどのような言動を取りやすいのか、どのようなことに困るのかについての理解や共感を経て、より良い支援について考えることが

大切である。

作業療法士にはそのために必要な支援を行うためのスキルと知識が領域を問わずに求められる。身体障害領域の対象者を主として関わっていたとしても認知症の方が対象者となる可能性は、高齢社会の日本においては非常に高いからである。対象者の認知機能が低下していたとしても有用なリハビリテーションとは何か、生活行為の改善は何かを考えるためには、作業療法士は認知症については当たり前に理解を深めておかなければならない。

なお、認知機能が低下する症候群の総称。認知症は病名ではない事に注意。

また、せん妄との鑑別が非常に重要である。

認知症の種類

アルツハイマー型認知症


脳血管性認知症


レビー小体型認知症


前頭側頭型認知症


アルコール性認知症


認知症の作業療法

認知症の方の残存機能を十分に活かせ、生活の活力となるような作業を選択するべきである。

特に、喪失体験が多い中でも、生きがいを得たり感じられるよう支援する。

そのため、記憶力を向上させようとして、本人のストレスが高まるような脳トレや計算問題、漢字の想起を強制的に行うなどは絶対にあり得ない。

また、認知症の方本人が認知症であることを受け止められなかったり、症状の進行によって心神喪失となっていく過程において、家族をはじめとした周囲の人との関係性が徐々に壊れていくことが少なくないので、その壊れが致命的なものにならないように、必要な支援を行っていくことになる。

一般に家族の方は、認知症に対する十分な知識を学ぶ前であれば、問題行動を叱って抑制しようすることが多い。これは無意味な上に、認知症当事者本人の周辺症状を悪化させるだけの悪手であるがそのことは社会的に当たり前の知識ではないため、家族や周辺の人々が行ってしまっても不思議ではない。そうした関係性や症状を悪化させかねないような関わり方について指摘し、可能な範囲で修正を試みるなども一つの重要な支援である。

また、認知症の方の内面について、代わりに代弁、言語化することで、周囲の人との関係性を改善することも重要な役割の一つである。

認知症は進行性の疾患なので、時間ともに進行の速度に差はあれど症状は基本的に悪化する。

そのため、それまでうまくいっていたやり方ではうまくいかなくなるということが何度も起こることになる。この時作業療法士が都度、再評価を行い、認知症の方本人が残存している能力のうち活用できるものを用いて生活行為をうまく行えるように調整をしたり、人的資源との調整を行う。