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リハビリテーション(rehabilitation)とは、復権、権利の回復を意味する。また、転じて生活が困難な状態から、また困難を抱えたままであっても生活が可能な状態に向けて整える試みのことである。 | |||
そこには、単に機能回復することではなく、社会的存在としての人の復権までを含める。 | そこには、単に機能回復することではなく、社会的存在としての人の復権までを含める。 | ||
[[作業療法]] | [[作業療法]]はリハビリテーションの重要な手法の一つである。 | ||
==概要== | |||
リハビリテーションとは、[[怪我]]や[[病気]]、[[障害]]から回復することを目的とした医療行為や治療法、またそのための手段や過程。 | |||
リハビリテーションの目標は、個人の身体的、認知的、感情的な能力を回復させ、可能な限り通常の日常生活に戻れるようにすることにあり、本人の主体性がその時間あたりの効果に大きく影響する事例がある。 | |||
リハビリテーションには、理学療法、作業療法、言語療法、心理カウンセリングなど、さまざまなサービスや介入が含まれており、幅広い概念を包括するが、一言で言えば、「生活再建」の取り組みであると言える。医学的管理だけでなく、支援技術、職業訓練などが含まれる場合もあり、リハビリの具体的な種類と期間は、個人のニーズと怪我や病気の性質によって異なる。 | |||
つまり、リハビリテーションの目的は、対象者が日常生活をより良く過ごせるよう支援することが目的である。また、対象者の自立を促し、社会参加を支援することもリハビリテーションの重要な役割である。 | |||
==語源== | |||
リハビリテーションの語源はラテン語のre(再び)+habilis(適した)にある。 | |||
もともとの言葉の持つ意味としては「再び適当な状態になる(最適化する)こと」などの意味あいをもつ。 | |||
そこから、「回復する」といった意味合いを持つようになっている。 | |||
==リハビリテーションの社会的意味合い== | |||
もともと「協会からの破門を取り消され、社会的に復権すること」の意味において、リハビリテーションという言葉が用いられることがあった。 | |||
こうした文脈において、何らかの[[障害]]があるとき、単なる心身の機能回復を超えた「権利の回復、復権」という社会的な意味合いをリハビリテーションという言葉は持っていると言える。 | |||
単なる[[機能回復訓練]]を指して、リハビリテーションと用いることが多いが、それは日本人にとってはリハビリテーションという言葉が持つ感覚を直感的に理解することが難しいためである。 | |||
==リハビリテーションのメリット== | |||
リハビリテーションは、身体的、精神的、社会的な側面にわたって患者の全体的な生活の質の向上を目指すものである。専門家による個別のサポートを受けることで、これらのメリットを最大限に活用できる。 | |||
リハビリテーションを受けることのメリットには、以下のような点が期待できる。 | |||
===身体機能の改善=== | |||
[[運動能力]]や[[筋力]]の向上、[[痛み]]の軽減、[[関節可動域]]の拡大などが見込まれる。 | |||
===日常生活の自立=== | |||
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===社会復帰=== | |||
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===コミュニケーション能力の向上=== | |||
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==リハビリテーションが必要となる機会== | ==リハビリテーションが必要となる機会== | ||
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===完全に機能回復が期待できる場合=== | ===完全に機能回復が期待できる場合=== | ||
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まず、おおよそ本人の希望はそこに向かうし、そうすることが最も経済合理性を高めるからである。 | |||
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===戦争とリハビリテーション=== | |||
ウクライナとロシアの戦争の結果リハビリテーションが必要な場面が、率直に描かれている。 | |||
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===社会的機能の喪失や低下にある状態からの回復=== | |||
社会的機能の喪失や低下には、[[コミュニケーション能力]]の低下、[[自立]]した生活の困難、職業能力の喪失、社会参加の障害、人間関係の問題が含まれる。 | |||
これらは、[[言語障害]]や[[聴覚障害]]、[[日常生活動作]]の低下、身体的・精神的障害、障害に伴う社会的制約や[[ストレス]]により生じる。 | |||
リハビリテーションは、これらの問題を改善するための個別の評価と計画に基づく専門的なアプローチを提供する。 | |||
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言語障害や聴覚障害が原因で、人とのコミュニケーションが難しくなること。 | |||
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身体的、精神的障害により、以前の職業に復帰することが難しくなる場合。 | |||
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[[障害]]によって、[[コミュニティ活動]]や[[社会行事]]への参加が制限されること。 | |||
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障害に伴うストレスやコミュニケーションの障壁が、家族や友人との関係に影響を及ぼすこと。 | |||
===高齢期のリハビリテーション=== | |||
[[生活行為向上マネジメント]]で、生活全体として[[作業療法士]]が[[マネジメント]]する事で、高齢者の健康余命に貢献することが示されている。 | |||
生活リハ(生活リハビリテーション)という言葉も、一般的になってきている。 | |||
特別何かを新たに組み込むことよりも、これまでのその人の生活の流れや、生き様に寄り添い手助けする方が長期的には合理性が高いということである。 | |||
何より本人のQOLが高い。 | |||
作業療法士はそういう仕事をリハビリテーションとして行わなければならない。 | |||
===認知症のリハビリテーション=== | |||
新しい能力の獲得は苦手になる上、単に出来ない障害ではなく、うまく出来ない障害が増えていく。 | |||
出来るや自尊心、その人らしさをうまくマネジメントして、心理的健康をうまく保つリハビリテーションが作業療法士には求められる。 | |||
当然そのための認知症を捉える視点、知識、技術は作業療法士として保有しているものとして社会はまなざす。 | |||
その期待に応えられる作業療法士をうまく抽出し、活躍の機会をマッチングする仕組みが必要である。 | |||
===精神のリハビリテーション=== | |||
精神障害が原因で社会生活を安定して送れない場合、その人が社会の中で、社会とつながりを持って生きていけるように[[作業療法士]]は支援する。 | |||
===小児発達のリハビリテーション=== | |||
生育や発達の様子が、生活や能力獲得に困難をきたす場合に、その親の心身の負担を軽減し、子供との関係性の構築を支援する。 | |||
また、子供自身にも必要な[[作業療法]]を提供する。 | |||
===終末期のリハビリテーション=== | |||
ターミナルとも言われる。 | |||
[[作業療法士]]は、対象となる方が、最後までその人らしく過ごせるように、[[作業]]を基盤として関わる。 | |||
==意欲低下とリハビリテーション== | |||
対象者の意欲低下がある場合には、[[セラピスト]]の在り方が重要な要素になる | |||
具体的には、リハビリテーションにおいて意欲が低下している人へのセラピストの望ましい接し方は、個々のニーズや感情に寄り添うことである。 | |||
まず、患者の話をじっくり聞き、彼らの感情や懸念を理解することが必要である。また、リハビリテーションの目標を共に設定し、小さな成功体験を積み重ねることで、自信を育てるアプローチが有効である。 | |||
また、本人にとって意味のある活動や関心のあることをリハビリテーションに取り入れ、モチベーションの向上を図ることも重要である。[[作業療法士]]がよく行う戦略でもある。ポジティブなフィードバックを与え、患者、対象者の努力を認めることで、彼らの自尊心を高めることができる。また、リハビリテーションは時に困難であり、挫折感を感じることもあるため、セラピストは根気強く、当事者本人に寄り添った支援を提供することが求められる。 | |||
一方で、当事者の家族や支援者との連携も重要である。家族や支援者に対して、リハビリテーションの進捗や目標について情報を共有し、当事者への支援方法について相談することで、本人のモチベーションを高める支援が可能となる。このように、対象者、当事者一人ひとりの状況やニーズに合わせた柔軟なアプローチが、リハビリテーションにおけるセラピストには求められる。 | |||
===ポジティブな再学習の重要性=== | |||
同様な機能回復が見られる場合においても、回復した機能を使用し続けるかどうかには、対象者の方の精神的自律を支援することの重要性が示唆されている。<ref>[https://jneuroengrehab.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12984-023-01238-0 Autonomy support encourages use of more-affected arm post-stroke | Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation | Full Text]</ref> | |||
==リハビリテーション科だけ長い== | |||
https://dailyportalz.jp/kiji/rehabilitation_ka-dake-nagai |
2024年6月25日 (火) 14:27時点における最新版
リハビリテーション(rehabilitation)とは、復権、権利の回復を意味する。また、転じて生活が困難な状態から、また困難を抱えたままであっても生活が可能な状態に向けて整える試みのことである。
そこには、単に機能回復することではなく、社会的存在としての人の復権までを含める。
作業療法はリハビリテーションの重要な手法の一つである。
概要
リハビリテーションとは、怪我や病気、障害から回復することを目的とした医療行為や治療法、またそのための手段や過程。
リハビリテーションの目標は、個人の身体的、認知的、感情的な能力を回復させ、可能な限り通常の日常生活に戻れるようにすることにあり、本人の主体性がその時間あたりの効果に大きく影響する事例がある。
リハビリテーションには、理学療法、作業療法、言語療法、心理カウンセリングなど、さまざまなサービスや介入が含まれており、幅広い概念を包括するが、一言で言えば、「生活再建」の取り組みであると言える。医学的管理だけでなく、支援技術、職業訓練などが含まれる場合もあり、リハビリの具体的な種類と期間は、個人のニーズと怪我や病気の性質によって異なる。
つまり、リハビリテーションの目的は、対象者が日常生活をより良く過ごせるよう支援することが目的である。また、対象者の自立を促し、社会参加を支援することもリハビリテーションの重要な役割である。
語源
リハビリテーションの語源はラテン語のre(再び)+habilis(適した)にある。
もともとの言葉の持つ意味としては「再び適当な状態になる(最適化する)こと」などの意味あいをもつ。
そこから、「回復する」といった意味合いを持つようになっている。
リハビリテーションの社会的意味合い
もともと「協会からの破門を取り消され、社会的に復権すること」の意味において、リハビリテーションという言葉が用いられることがあった。
こうした文脈において、何らかの障害があるとき、単なる心身の機能回復を超えた「権利の回復、復権」という社会的な意味合いをリハビリテーションという言葉は持っていると言える。
単なる機能回復訓練を指して、リハビリテーションと用いることが多いが、それは日本人にとってはリハビリテーションという言葉が持つ感覚を直感的に理解することが難しいためである。
リハビリテーションのメリット
リハビリテーションは、身体的、精神的、社会的な側面にわたって患者の全体的な生活の質の向上を目指すものである。専門家による個別のサポートを受けることで、これらのメリットを最大限に活用できる。
リハビリテーションを受けることのメリットには、以下のような点が期待できる。
身体機能の改善
運動能力や筋力の向上、痛みの軽減、関節可動域の拡大などが見込まれる。
日常生活の自立
食事、着替え、入浴などの日常生活動作(ADL)の向上により、自立した生活が可能になる。
社会復帰
職業リハビリテーションを通じて、仕事への復帰や職場での適応能力が高まる。
コミュニケーション能力の向上
言語療法などを通じて、コミュニケーションの障害が改善される。
精神的なサポート
リハビリテーションが必要となる機会
事故で怪我をした場合や、病気で結果として障害が生じたときに、生活を再構築するためにリハビリテーションが必要とされることが多い。
完全に機能回復が期待できる場合
骨折や、外科的な再建手術、衰弱等による耐久性低下など、病前あるいは受傷前の状態とほぼ変わらない水準まで機能回復が期待できる場合には、単純な機能回復を目指すことが多い。
まず、おおよそ本人の希望はそこに向かうし、そうすることが最も経済合理性を高めるからである。
それらの機能回復のために戦略的に、他職種が関わることになる。
機能回復や獲得が期待できない場合
進行性の疾患があるなどして、障害の抜本的解決が難しい、あるいはむしろ進行していく場合などに、作業療法士はその人らしさを支援する、社会的復権の意味におけるリハビリテーションをおこなう。
単純でもなく、一様でもない故に、作業療法士には幅広い能力が期待、要求される。
戦争とリハビリテーション
ウクライナとロシアの戦争の結果リハビリテーションが必要な場面が、率直に描かれている。
戦闘で四肢を失ったウクライナ兵の「セックス指南書」に書かれていること | 「新たな関係」に直面する恋人たち | クーリエ・ジャポン
社会的機能の喪失や低下にある状態からの回復
社会的機能の喪失や低下には、コミュニケーション能力の低下、自立した生活の困難、職業能力の喪失、社会参加の障害、人間関係の問題が含まれる。
これらは、言語障害や聴覚障害、日常生活動作の低下、身体的・精神的障害、障害に伴う社会的制約やストレスにより生じる。
リハビリテーションは、これらの問題を改善するための個別の評価と計画に基づく専門的なアプローチを提供する。
コミュニケーション能力の低下
言語障害や聴覚障害が原因で、人とのコミュニケーションが難しくなること。
自立した生活の困難
日常生活動作(ADL)の低下により、食事、着替え、入浴などの基本的な活動が自分で行えなくなること。
職業能力の喪失
身体的、精神的障害により、以前の職業に復帰することが難しくなる場合。
社会参加の障害
障害によって、コミュニティ活動や社会行事への参加が制限されること。
人間関係の問題
障害に伴うストレスやコミュニケーションの障壁が、家族や友人との関係に影響を及ぼすこと。
高齢期のリハビリテーション
生活行為向上マネジメントで、生活全体として作業療法士がマネジメントする事で、高齢者の健康余命に貢献することが示されている。
生活リハ(生活リハビリテーション)という言葉も、一般的になってきている。
特別何かを新たに組み込むことよりも、これまでのその人の生活の流れや、生き様に寄り添い手助けする方が長期的には合理性が高いということである。
何より本人のQOLが高い。
作業療法士はそういう仕事をリハビリテーションとして行わなければならない。
認知症のリハビリテーション
新しい能力の獲得は苦手になる上、単に出来ない障害ではなく、うまく出来ない障害が増えていく。
出来るや自尊心、その人らしさをうまくマネジメントして、心理的健康をうまく保つリハビリテーションが作業療法士には求められる。
当然そのための認知症を捉える視点、知識、技術は作業療法士として保有しているものとして社会はまなざす。
その期待に応えられる作業療法士をうまく抽出し、活躍の機会をマッチングする仕組みが必要である。
精神のリハビリテーション
精神障害が原因で社会生活を安定して送れない場合、その人が社会の中で、社会とつながりを持って生きていけるように作業療法士は支援する。
小児発達のリハビリテーション
生育や発達の様子が、生活や能力獲得に困難をきたす場合に、その親の心身の負担を軽減し、子供との関係性の構築を支援する。
また、子供自身にも必要な作業療法を提供する。
終末期のリハビリテーション
ターミナルとも言われる。
作業療法士は、対象となる方が、最後までその人らしく過ごせるように、作業を基盤として関わる。
意欲低下とリハビリテーション
対象者の意欲低下がある場合には、セラピストの在り方が重要な要素になる
具体的には、リハビリテーションにおいて意欲が低下している人へのセラピストの望ましい接し方は、個々のニーズや感情に寄り添うことである。
まず、患者の話をじっくり聞き、彼らの感情や懸念を理解することが必要である。また、リハビリテーションの目標を共に設定し、小さな成功体験を積み重ねることで、自信を育てるアプローチが有効である。
また、本人にとって意味のある活動や関心のあることをリハビリテーションに取り入れ、モチベーションの向上を図ることも重要である。作業療法士がよく行う戦略でもある。ポジティブなフィードバックを与え、患者、対象者の努力を認めることで、彼らの自尊心を高めることができる。また、リハビリテーションは時に困難であり、挫折感を感じることもあるため、セラピストは根気強く、当事者本人に寄り添った支援を提供することが求められる。
一方で、当事者の家族や支援者との連携も重要である。家族や支援者に対して、リハビリテーションの進捗や目標について情報を共有し、当事者への支援方法について相談することで、本人のモチベーションを高める支援が可能となる。このように、対象者、当事者一人ひとりの状況やニーズに合わせた柔軟なアプローチが、リハビリテーションにおけるセラピストには求められる。
ポジティブな再学習の重要性
同様な機能回復が見られる場合においても、回復した機能を使用し続けるかどうかには、対象者の方の精神的自律を支援することの重要性が示唆されている。[1]