統合失調症
統合失調症は、下記の共通する症状が見られる時に診断名となる。
原因
根本的な原因は今なお不明。
また、単一的な要因が原因なのか、複数の要因が存在するのかも不明。
論理的には、統合失調症という同じ診断名がついていてもその発症の原因はそれぞれの方によって異なる可能性もある。
症状
原因がわからないとはいえ、症状についての概念は整理が試みられている。
大切なのは、常に障害を持っているその人のことを知ろうする事である。
既に知られている症状や病名にその人を当てはめることではない。必要なら、作業療法士は自分で言語化してでもよりリアルなその人像に迫れるような表現を追求するべきである。
統合失調症という障害には、認知機能障害がその根底にあると考えられるようになってきている。
また、脳の神経伝達がうまくいかず、本来脳の中で行われるはずの情報の整理・統合がうまくいかない病態と考えられている。
これが、統合失調症という病名の由来となっている。
精神障害の中にも、頭部外傷の時に見られるような高次脳機能障害と共通するものを認めるようになってきている。
統合失調症の症状の中で目立つものには、これまで様々な名前が付けられている。有名なものを紹介する。
有名な症状
ワーキングメモリ障害[1]
妄想
幻覚
感情の起伏の極大化
感情の働きの低下
思考能力の低下
言語運用能力の低下
その他重要な症状
注意機能障害
記憶活用能力の低下
概念の運用能力の低下
自己決定能力の低下
影響
日常生活、労働には意欲の低下、対人関係には社会常識を踏まえた振る舞いができなくなることや感情の反応が鈍くなることが有意に寄与している可能性の報告[2]がある。
作業療法にできること
作業療法と作業療法士は、リハビリテーション、社会復帰のための支援を行う。
精神症状の早期軽減
急性期には、休養の合間に精神症状の早期軽減を図るために作業療法を用いることが多い。
意欲、やりがいの向上
発症が比較的遅く,社会生活の経験もあり,予後も比較的良好な対象者に関しては,精神科急性期作業療法においても,意欲ややりがいといったエンパワメントに焦点をあてた取り組みにも成果がある。[3]
社会不安症状の軽減
社会不安症状については、重度の患者は症状軽減が難しいもしくは時間を要する可能性があり、中等度から軽度の患者は作業療法介入による症状軽減効果が期待できる可能性が報告されている。[4]
就労支援
統合失調症を発症後、デイケア等の地域資源の利用が困難な為に、自宅での自閉的生活を経て(発症6年目〜10年目)自己維持活動やセルフケアさえ困難となっていたが、その後リハを目的として作業療法士が、頻度は週に1回、1時間で自宅訪問して関わる中で、本人から就労を望み、就労継続支援B型事業所の利用を開始し、その中で本人のしているセルフケアも改善した症例が報告[5]されている。この中で作業療法士はある種のコーディネーター的役割を果たしている。
作業療法と繋がることができる場所
大抵次の場所には作業療法士がいる。必要性に応じて繋がれることが大切である。
精神科の訪問ステーション
型分類
統合失調症には、型づけの分類がされていた過去がある。
それは、「破瓜(はか)型」「緊張型」「妄想型」とされ、作業療法養成過程で用いられる精神障害の教科書にもそのように記載がある。
しかし、現代では、あまり型を用いて分類される事はなくなっている。
臨床上重要な意味がなくなっていることが大きな要因と思われる。
反応の良い薬が増えたことで、型による違いがあまりよくわからなくなったという解釈もあり、なぜ意味が亡くなったのかは判然としないが、特に片付けを今現在改めて行うことに臨床上大きな意味はないと思われる。
- ↑ 中坪太久郎他: 統合失調症患者のワーキングメモリに関する検討トランプ課題を用いて.日本心理学会第72回大会セッションID:2AM006
- ↑ 岡田宏基他:長期入院統合失調症者の社会機能に陰性症状が与える影響—失快楽症,非社会性,意欲の低下,感情鈍麻,言語の貧困と社会機能との関連.作業療法39:292~300,2020
- ↑ 統合失調症の急性期作業療法において意味のある作業に着目することの有用性.南庄一郎.作業療法.38:103~109.2019
- ↑ 山本敦子他:社交不安症状のある統合失調症患者に対する作業療法の効果.2019年38巻2号p.213-221
- ↑ 真下いずみ他:生活行為向上マネジメントを用いて作業療法士が地域で介入することで就労が可能となった重症統合失調症患者の一例. 作業療法39巻3号(2020年6月).pp.372-379