精神
人間の心、知的な動き、情報を扱う機能、能力を総合したものが精神と表現される。
作業療法は全ての人間を対象とする。よって、精神に病を持つ人も対象とする。
作業療法との関係
精神を対象にするということは目に見えないものを扱うことである。
そのため、どうしても抽象的な表現を駆使して、さらに抽象的な表現試みるという複雑さが生じがちである。
作業療法においては具体的な作業を用いて、精神を表出したものを目に見える形で、作業療法士と対象者と第三者とがそれぞれ確認することができるというこの点が、極めて重要な利点である。
精神障害
まず、心情的な表現を禁止された状態で、精神障害の表現を試みる。
すると一つの表現として、「情報処理及び、出入力」の障害とも言える。
人の心も、脳のシナプスの単純な情報が連絡し合うことで表現されている情報に還元される。つまり、脳の情報処理が何らかの形で、何かの問題に帰着することが、精神障害の本質である。
逆説的に、情報処理が特異で、平均的なそれと異なっていたとしても特に日常生活や周囲の人との関係性を含む社会的問題が発生しないのであれば、精神障害としては扱わない。
心情的表現を用いれば、ずばり「心の病」である。
本来、人の心は把握しきれないほど多くの要素に左右されるものである。
非常に繊細で尊重されるべきものである。
その人の心が困っていることに寄り添い、その支援は適当な量と質の配慮が必要になるであろう。
旧来の精神障害
「よくわからない、理解できない」に、なんとか現象としての名前を与えようとした結果としての、病名であった。
例えば、痴呆症、分裂病などがそれに当たるし、現在の目線で考えると分類も適当であったかどうかは検討の余地がある。
現代の精神障害
エビデンスとファクトベースで、病態が明らかにされつつあるものも増えている。
一方で、相変わらず解明の途中で、機序が不明なものも多い。
作業療法が貢献できること
病の機序が明らかになっているものについては、具体的な練習を通して、生活訓練の場面で作業療法と作業療法士は対象者の方を支える。
病そのものは改善しない場合でも、人としての対象者のエンパワメントが可能な点で作業療法は対象者の方の健康に貢献できる。
作業療法の対象者となる精神障害の例
作業療法士と作業療法にとって重要なことは、対象は病ではなく病を持つ人である。
それを踏まえれば、病名のみが問題となる事はないであろう。しかし、困りごとの背景としての病名は重要である。
一例を挙げる。
精神障害の病期と作業療法
分類よりも、対象者の状態が評価できることの方が重要なので、病期は参考程度にすべきであるが、一応の参考にはなる。
特に、これまで治療歴があるかどうか、問題となるポイントが設定できるのか、それとも症状が多岐に渡るのか、器質性が大きいのか育ってきた環境の要因などを踏まえて考えれば、病期によっての回復の道筋やイメージが立てやすくなる。
急性期
問題点が表面化している時期。症状がこの時期に把握できていることがその後の治療のスムーズさに影響する。
回復期
投薬等によって、症状が落ち着いている状況を、指して言う。社会への参加の促進を目指すことが多い。
維持期
症状が改善せずとも、生活行為の向上を目指すこと時期。
終末期
人としてのの終末期。自分の人生の最後をデザインする時期。