身体
身体を対象とする作業療法というのは、多くの人が一般的に思い浮かべるリハビリテーションの一つであるが、身体機能の向上はあくまで一つの結果である。作業療法の本来の目的は、その人の人生における作業の充実と本人のエンパワメントである。
作業療法士は、対象となる方が、自身の身体を最大限活用して、その人が望む生活、作業、仕事の再構築をすることを支援するのが仕事である。
作業療法士は、単に、無目的な身体機能回復に終始するのではなく、その人の人生にとって重要度の高い、その先の作業、活動や参加の拡大を見据えた支援を行うのが仕事である。
そのためには、より広い知識と個人個人の人生に対する理解が欠かせないことを作業療法士はわすれてはいけないし、作業療法対象者の方には、そのための要求をどんどんとすべきである。
完全に元に戻るを支援する
事故や病気などで、一時的にからだがうまく使えなくなることがある。
典型的なものに、骨折がある。
こうした状態は一時的に可能な作業が制限された状態となるが、適切な処置をして、エビデンスに基づく各種リハビリテーションを適切に行えば、身体機能は以前とかわらない水準まで回復する。一方で、必要な介入をせず、その結果として活動性が低下することは、その人の機能が低下した状態が恒常化して、人生の作業が阻害されることになる。
社会にとっても、これは大きな損失であるし、個人にとってはとんでもなく大きな機会損失であるので、社会としてこの過程をきちんと支援をしなければならない。
うまく使えない状態から、うまく使えるようになるまでの状態をシームレスに支援することに作業療法と作業療法士は役立つ。
元に戻らないを支援する
重度の怪我や疾患によって、以前行えていたことが、機能的に全く不可能になることがある。
そのような状態に置かれた人は、絶望ともいえる衝撃を受けることになる。
生活をゼロベースで再構築することが必要になる。作業療法士は、その再構築と問題解決を支援する。
どんどんできなくなる支援する
進行性の難病は、人からどんどん作業を奪う。喪失体験の連続である。
がんや認知症などの絶望は計り知れない。こうした疾患においても、身体的な障害は確実に出現する。
身体的な障害が重度になっていくことによって、どんどんできることが減っていく。作業剥奪の状態が進行する。
たとえそのような状態になっても、とても前向きに明るくいきていくことができる人たちがいる。
その人たちに助けられながら、作業療法士はともに寄り添って生きていく。
また、前を向けないひとといっしょに共に在る。